丁寧な字で記された数値や、見慣れない言葉の羅列がページを埋めていた。白血病で長男の尚矢さん=享年12=を亡くした金高裕之さんのノート。記録してあったのは、治療についての説明や検査結果だった。

 手記「尚矢の笑顔がくれたもの」を出版した裕之さんと美和さん夫婦。取材のために唐津市内のお宅におじゃました。本の基になったノートを見せてほしい。ぶしつけなお願いにも、2人は快く応じてくれた。めくると、医師の説明を懸命にメモする裕之さんの姿が目に浮かび、胸が痛んだ。

 裕之さんは、病と闘う息子に「頑張れ」と繰り返したという。「頑張らなくてもいい、とはとても言えなかった。掛ける言葉がそれ以外になかった」。頑張ってくれ、治ってくれと願い続けたであろう日々を思った。

 リビングの隣の部屋で遺影に手を合わせた。「空が見えるようにこの場所を選んだんです」と2人。尚矢さんは窓に向かって笑いかけていた。

 部屋も見せてもらった。勉強机や漫画が並んだ本棚、バスケットボールが、ひっそりと並んでいた。そこかしこに尚矢さんの面影があった。家には、愛息への変わらぬ愛情があふれていた。(唐津支社・藤本拓希)

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