「シミュレーションはしているが、何が起きるか予想がつきません」―。ベルギーのブリュッセルにあるトヨタモーターヨーロッパで昨年11月、英国の欧州連合(EU)離脱の影響を尋ねると広報担当者はそう答えた◆そして半年たった今も英国は混乱続き。とうとう首相のメイさんが離脱問題で混迷した責任を取って辞任を表明した。もともとメイさんはEU残留派。それだけに経済の混乱が予想される「合意なき離脱」を避けようと議会交渉に奔走したが、結局は頓挫した。涙声で辞任表明した孤独な姿が欧州の今を象徴していた◆欧州では社会の分断が進んでいる。「雇用や治安の悪化は移民流入のせいだ」「地方の実情に疎いEUのエリート官僚が物事を決めている」―。経済的に恵まれない地方と都市との格差、持たざる側にある不公平感。それが格好の集票対象となっている◆実際、先週の欧州議会選挙では、「自国第一」を志向するEU懐疑派や極右、ポピュリズム(大衆迎合主義)勢力が一定の支持を集めた。その状況は自国優先、移民排斥を掲げる米国とよく似ている◆ブリュッセルのEU本部を訪ねた時、玄関前に並ぶEU旗を見上げた。青地に12個の金色の星が輪を描く旗に込められた思いは「連帯」だ。2度の大戦の反省から生まれたその理想はどこへ向かうのだろうか。(丸)

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