©2019『長いお別れ』製作委員会 ©中島京子/文藝春秋

監督/中野量太「湯を沸かすほどの熱い愛」
出演/蒼井優、竹内結子、松原智恵子、山﨑努ほか
配給/アスミック・エース

■ 5月31日(金)~【109】で上映予定

 


>>>記憶を失っていく父との時間とは。家族の7年間を温かくつづる

 高齢化社会を反映してか、認知症を題材にした映画は多い。中島京子の同名小説を映画化した「長いお別れ」では、日本を代表する俳優の山﨑努が認知症になった父親を演じている。と聞けばちょっと見構えてしまいそうだが、温かな家族愛を感じるドラマになっている。
 一家は、元中学校校長の父(山﨑努)と妻(松原智恵子)、夫の転勤により米国で暮らす長女・麻里(竹内結子)、カフェ経営の夢を抱く独身の次女・芙美(蒼井優)。父の70歳の誕生日を祝うため実家へ帰った姉妹は、半年前に父が認知症と診断されたことを母から告げられる。そこから家族の7年間をつづっていく。
 介護に苦労するシーンもあるが、時間をかけて描かれるのは娘たちの状況。芙美は移動販売の店を始めるがうまくいかず、恋人との結婚も期待に終わる。麻里は外国での生活になじめず、何でも他人事のような夫に不満を持ち、反抗期の息子は何を考えているのか分からない。私としては正直、彼女たち自身の悩みの方が身につまされる。
 そんな娘たちは、記憶を失っていく父親を相手に、ふと泣き言を言う。そして、心が癒やされていることに気付いたりするのだ。子どものころの父との思い出がよみがえる遊園地でのシーンが温かい。だから映画全編の印象は、一風変わった「父と娘の物語」。認知症の父と過ごす時間は長く、その暮らしには「いろいろあるんだよ」と言われているような、大らかさを感じた。(シネマライター・KAORU)

 Side Story  別れの時間をつづった原作

©2019『長いお別れ』製作委員会 ©中島京子/文藝春秋

 少しずつ記憶をなくしていき、ゆっくり遠ざかっていく。その様子から、認知症は米国で「Long Goodbye(長いお別れ)」とも表現されるという。これを題名にした原作は、「小さいおうち」で直木賞を受賞した中島京子。認知症を患った父親との日々をもとにした作品はさまざまに考えさせられる。

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