また、不祥事か―。そう思った鳥栖市民も多かったのではないか。市上下水道局の架空発注問題である。市は5月17日に記者会見して不正があったことを明らかにし、22日には関係職員4人の処分を早々に発表したが、問題の詳細は説明がないままで、真相は“やぶの中”である。不祥事の連鎖を断ち切るために、市はまず説明責任を果たさなければならない。

 2018年10月に、上下水道局の発注工事で手直しが発生したことが発端である。市は、詳細を伏せたまま、たとえ話として、以下のように説明した。業者Aの担当工事が終わったのを受けて、業者Bが工事に入ると、Aの施工不良が見つかり、手直しが必要になった。AがBに補償することになったが、金額を巡り、折り合えなかった。延長した工期がさらに延長となれば、行政サービスに支障が出かねないと懸念した上下水道局の次長は、業者Aに架空発注した工事費で補償額の一部を肩代わりすることを提案。ことし2月、部下2人に指示して工事設計書などを改ざん、架空発注を行い、業者に代金を支払った。工事の進捗(しんちょく)状況を確認していた4月1日、次長が局長に架空発注を打ち明け、不正が発覚している。

 これまで2回の記者会見で、市は工事名と内容、金額、業者名、架空発注額などの詳細については明らかにしていない。その理由について「公表すれば、一種の社会的制裁となり、業者に不利益を与え、名誉を毀損(きそん)する恐れがある」と説明、訴訟リスクを懸念しているという。

 その一方で、22日には職員4人の処分を発表した。特に次長については停職6カ月の懲戒処分に加えて、課長へ降格する分限(ぶんげん)処分も行った。半年間、手当を含む給与は支払われない。問題の全容を明らかにしないまま、かなり厳しい処分がなされている。

 市の管理体制の甘さを指摘する声もある。上下水道局は契約と支払いを担当する管理課と、工事の設計、施工管理を行う事業課の二つの課で構成され、縦割りになっている。事業課が設計し、「工事が終わった」と書類をそろえて管理課に回せば、技術職のいない管理課は流れ作業的に代金を支払うシステムという。

 今回はこうした事業課内部だけで処理できるシステムが悪用された。同課が不正に手を染めれば見つけようがないということである。「市職員が不正を働くわけがない」との認識から、こうしたチェック体制になっているのだろう。

 例えば民間業者が家を建てる場合は、建築確認申請を出し、完成すれば、第三者である行政機関などの完了検査を受ける。今回のような不正を許さないためには、行政にも、第三者によるダブルチェックが必要ということか。

 鳥栖市では16年に市給食センターの災害復旧工事を巡り、職員の不適切な対応が問題になった。18年9月には新産業集積エリア整備の用地買収に絡む農地法違反が発覚した。ともに市長が監督責任を取って減給、関係職員を処分して綱紀粛正に取り組んできたが、その水面下で「架空発注」という新たな不正が進行していた。市は今後、業者への対応についても検討するが、何よりも不祥事の背景を含めて全容を明らかにし、教訓を共有すべきである。(高井誠)

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