太平洋各地で戦没者の遺骨収集に携わった人類学者楢崎修一郎さんはこんな言葉を残している。〈「人は二度死ぬ」という。一度目は肉体が滅んだ時。二度目は誰もその人を顧みなくなった時だ。戦没者を二度死なせてはならない。我々には、彼らのことを語り継いでいく義務がある〉◆遺骨発掘・鑑定の第一人者といわれた楢崎さんだが、今年3月に北マリアナ諸島・テニアン島で遺骨収集の活動中に急逝した。60歳だった。収集体験をまとめた『骨が語る兵士の最期』(筑摩選書)を昨夏出版。本欄でも紹介したが、これが遺著となった◆第2次世界大戦では日本人310万人が亡くなった。うち海外での戦没者は240万人で、いまだ113万柱が未収容だ。風雨にさらされ、海の底にある遺骨は無言のまま収容を待っている。終戦から70年以上経過したが、「戦後」は終わっていないのだ◆遺骨収集では最近、厚労省と米国防総省が協力関係を強化するという覚書を結んだ。身元を特定するDNA鑑定技術や埋葬場所について情報共有を図るそうだ◆遺骨のうち、国が「収容可能」と位置付ける遺骨は59万柱だが、収容件数は減少傾向にあるという。楢崎さんが亡くなったことで収集作業が後退するようなことがあってはならない。「戦没者を語り継ぐ」のは今を生きるものの責務である。(丸)

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