運転技能教習でバックで車庫入れをする受講者

 佐賀県警が70歳以上のドライバーを対象にした無料の運転技能教習を始めた。年齢が進めば、誰しも判断能力や運動能力が衰え、事故を起こす恐れが高まる。自らの運転技能を自覚して、安全運転につなげる機会にしたい。

 他県に先例があるが、九州では初の取り組みという。毎週火曜日に佐賀市の運転免許試験場で、約1時間の教習を行っている。受講者は、運転免許技能試験官を助手席に乗せて試験場の車を運転。一時停止や安全確認など仮免許試験に準じた項目のチェックを受け、指導を受ける。予約制で1日に4人受講できるが、関心が高く、9月上旬まで埋まっているそうだ。

 佐賀県内の75歳以上の運転者に関する数字を挙げてみる。4月末現在の運転免許保有者は4万8176人で、全体の8・5%を占める。昨年県内で起きた人身事故で、最も過失が重い「第一当事者」になったケースは472件で、同じく8・5%を占めた。

 2018年に75歳以上で運転免許を返納した人は2490人。16年の925人、17年の2279人から年々増えている。17年に道交法が改正され、免許更新時の認知機能検査で「認知症の恐れ」と判定された場合、医師の診断を受けることが義務づけられたことが大きい。県内で昨年、「認知症の恐れ」と判定された人は590人。認知機能検査を受けた1万7429人の3・4%にあたる。590人のうち265人が免許を返納した。高齢者の事故を防ぐ制度が、県内でも少しずつ効果を表し始めている。

 運転免許試験場で行われた技能教習に同乗させてもらった。83歳の男性は「妻は免許を自主返納したが、私は今後も生活に車が欠かせない。自分の運転技術を確認したい」と受講した。慣れない車で次々にコースが指示されることもあり、一時停止線を越えて停車し、車庫入れで後部を接触させた。採点は、「100~70点」を最高に4段階ある中で最も低い「0点以下」。試験官は「停止線を越えるのは違反行為」とし、安全確認などいろんな点を指摘した。

 かなり厳しい評価だったが、男性の「受講前は運転技能に不安はなかったが、逆に不安になった。厳しく指摘してもらってよかった」という感想を聞き、教習の効果を実感した。この日受講した4人のうち3人は「0点以下」だった。“自己流”になっていた運転を見直す契機になったと思う。

 県警は4月から「シルバードライバーズサポート室」を新設、高齢運転者対策を強化した。全国で高齢運転者の重大事故が多発し、大きなニュースになっている。運転者以上に、心配や不安を募らせる家族も多いだろう。技能教習には家族も同乗できる。家族で運転や免許返納への備えを話し合うきっかけにもしたい。(小野靖久)

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