物語の舞台は小倉競馬場。亡くなった妻「一代(かずよ)」への思いから「1」の番号に賭け続ける男がいた。妻の形見の着物も質に入れてやってきたのだ。その日、朝からずっと負けていた男は最後のレースに有り金をつぎ込む。帰りの旅費もない。そしてレースは…◆『夫婦善哉(めおとぜんざい)』で知られる織田作之助(おださくのすけ)の短編小説『競馬』。競馬をする人もしない人も、スリリングな展開に引きつけられるはずだ。織田作之助本人も大阪の新聞社に勤めていた時に競馬の予想記事を担当。さらに実際の妻「一枝」を早くに亡くしており自伝的作品とされる◆馬に夢と人生を重ねる。そして喜びや涙がある。〈小心な男ほど破目を外した溺れ方をするのが競馬の不思議さであろうか〉と『競馬』の一節に。過度にのめり込むのは禁物だが、そこにはギャンブルという枠を超えて人を魅了する世界がある◆きょう26日は競馬の祭典「第86回日本ダービー」。2016年生まれのサラブレッドは7千頭余。うちレースに出走できるのはわずか18頭。過去にはシンザン、シンボリルドルフ、ディープインパクトなど競馬ファンならずとも名前が浮かぶ馬が頂点に立った◆クラシック三冠レースで皐月賞は「最も速い馬」、菊花賞は「最も強い馬」、ダービーは「最も幸運な馬」が勝つという。さて、令和最初の運に恵まれた馬は?(丸)

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