パリで約3カ月ぶりに行われた日韓外相会談で、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相は韓国人元徴用工訴訟判決を巡り、日韓に第三国の委員を加えた仲裁委員会開催を求めた河野太郎外相の提案に同意せず、消極的な対応に終始した。失望を禁じ得ない。 

 日本企業に賠償を命じた韓国最高裁の最初の確定判決から既に7カ月近く経過している。だが、韓国政府は「司法府の判断に行政府は介入できない」として、外交問題となっている訴訟への対応を先延ばしにしてきた。

 この間、韓国の原告団は日本企業の資産を差し押さえ、売却手続きを申請中だ。売却が実行されれば、1965年の国交正常化以降、最悪といわれる日韓関係を修復する機会さえ見いだすことが難しくなり、報復措置の応酬など日韓双方とも経験したことのない緊迫した局面に突入することも予想される。

 韓国は事態収拾に向け、日本との協議に乗り出す決断を下すべきだ。危機管理のメカニズムが機能していない現在の日韓関係を放置することは、不透明感の増す米朝の非核化交渉や米中貿易摩擦で揺れる北東アジア情勢の安定確保にもマイナスとなる。

 日本は元徴用工訴訟の判決自体が、両国民の請求権に関する問題は「完全かつ最終的に解決された」ことを確認した65年の日韓請求権協定にそぐわず、協定の枠組みを破綻させかねないと法的側面から韓国に対応を迫っている。これに対し韓国は、協定の解釈よりも、元徴用工の「苦痛と傷を癒やすため、共に努力する必要がある」(康外相)と人権問題として取り組む立場を優先させている。

 ボタンを掛け違った状態で論争が始まっているのだ。これでは、話し合いを続けても、溝は深まるだけだ。

 こうした悪循環を断ち切るには、首脳レベルでの論点整理と、「このままではいけない」という危機意識の共有がまずは必要となる。

 韓国は今年に入り、大阪で6月下旬に開催される20カ国・地域(G20)首脳会合を利用した安倍晋三首相と文在寅(ムン・ジェイン)大統領の首脳会談開催を模索している。日本は韓国が事態収拾のための対応策を示すことなどを条件に会談開催を慎重に検討している。

 だが、首脳会談開催で駆け引きする余裕はないはずだ。両首脳が膝をつき合わせ、絡み合った糸を解きほぐす努力を示すことが今は必要だ。韓国では、財団による救済案を検討する動きもある。日本企業が賠償に応じることを前提にしてはいるが、局面打開に向け知恵を出し合う契機としたい。

 韓国は「歴史問題と未来志向の関係構築」の両輪で関係修復を図ろうとしている。しかし、未来志向の基盤となる信頼関係が損なわれ、共有すべき戦略的目標もはっきりしない現状では、未来志向の関係づくりはおぼつかない。この点も、両首脳が会談で徹底的に議論すべきだろう。

 日韓は冷戦終結後、幅広い分野で相互依存の関係を強めてきた。歴史問題や領土問題の荒波をしのぎながら、今日では年間1千万人規模で両国民が往来している。

 相互依存と民間交流の資産を食いつぶすようなことだけは避けなくてはならない。東京とソウルだけを舞台とした政治・外交関係だけが日韓の全てではないのだ。(共同通信・磐村和哉)

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