サッカーJ1リーグ戦で開幕から低迷していたサガン鳥栖がようやく調子を上げてきた。5月7日に金明輝(キンミョンヒ)新監督が正式就任するまでわずか1勝と苦しんでいたが、チームの原点でもある「ハードワーク」重視のスタイルに回帰して2連勝。既にリーグ戦の3分の1を消化し、まだ降格圏内の17位と厳しい状況が続くが、若き指揮官とともに反転攻勢に出てほしい。

 昨季リーグワーストの29得点に終わった鳥栖は、今季就任したスペイン出身のルイス・カレーラス前監督の下、ボールを握って試合を支配するサッカーに取り組んだ。しかし、その戦い方はチームにフィットしきれず、4月15日からずっと最下位に甘んじる中で監督交代のカードが切られた。

 金新監督は昨季も当時のマッシモ・フィッカデンティ監督の解任に伴い、残り5試合から指揮。3勝2分けで14位に浮上してJ1残留に導いた。監督就任は2度目の“緊急登板”だ。

 ただ、今回の再登板は容易なものではない。就任前の開幕から10試合で挙げた得点はわずか1。守りでもイージーミスからの失点が続いていた。金監督は攻撃、守備両面の立て直しを任せられた。

 前監督の戦術の下では、局面での戦いは個人の力に委ねられ、選手たちからは自分の担当エリアを離れて味方をサポートすることにちゅうちょするような声も漏れていた。パスをつなごうにも出しどころがなく、攻撃も単騎突破頼みでチグハグな試合運びを繰り返した。一人一人のハードワークで数的優位をつくり、手数をかけずに攻める鳥栖らしいサッカーを知るファンにとってはもどかしさが募っただろう。

 金監督は兵庫県出身の38歳。現役時代は1対1の強さが持ち味のセンターバックで、千葉、甲府、富山などでプレーし2011年に鳥栖に加入した。その年、チームがJ1昇格を成し遂げたのを見届けると現役を引き、下部組織で指導者に転身した。

 U―18監督時代に何度か取材したが、規律を重視する実直なタイプと感じた。クラブが提携するオランダの強豪・アヤックスに研修に行った話の中で、「選手のモチベーションをどう高めていくか。緊張感を持った姿勢を選手に求めることと、トライしてのミスを許すことのバランスの大切さを学んだ」という言葉が印象に残る。

 新指揮官は就任会見で「サガン鳥栖らしさがベース。ゴールを奪うための道筋を選手たちと共有する」と語ったが、まさに本音から出た一言であったのだろう。その言葉どおり、選手たちは窮屈なプレーから解き放たれたようにピッチで躍動し、ハードワークをする本来の鳥栖の良さを取り戻した。役割があいまいだった守備面にもメスが入り、選手たちも「明確に一人一人の仕事を伝えてくれる」と采配に信頼を寄せる。

 昨季に続いて序盤の出遅れが響いている今季は、今後J1で戦い続ける上で正念場のシーズンとなろう。ルヴァン・カップは22日の試合に敗れて1次リーグ敗退が決まったが、前向きに捉えれば今後、リーグ戦に全力を傾けることができる。少しでも上の順位へ行けるように、一丸となった奮闘を期待したい。序盤の苦労が報われることを信じて、金サガンをわれわれも応援していこう。(市原康史)

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