国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防。排水門で仕切られた諫早湾(手前)と調整池(奥)=2017年4月、長崎県諫早市

 国営諫早湾干拓事業(長崎県)を巡り、潮受け堤防排水門の開門調査を命じた確定判決に従わない国が、漁業者側に開門を強制しないよう求めた請求異議訴訟で、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は22日、国と漁業者双方の意見を聞く弁論を7月26日に指定した。最高裁の弁論は判決を見直す場合に必要な手続きで、国側の請求を認めて開門命令を事実上無効とした二審福岡高裁の判断が見直される可能性が出てきた。

 確定判決に基づく開門命令が無効になり、開門を否定する司法判断が相次いだことで「非開門」の流れが強まっていたが、最高裁が審理を福岡高裁に差し戻した場合、先行きが見通せない状況となる。

 2014年の一審佐賀地裁は国側の請求を退けたが、昨年7月の二審判決は、国に開門を命じた10年12月の確定判決後の13年8月に漁業者の共同漁業権が免許の期限を迎えて消滅し、これを根拠にした「開門を求める権利も消滅した」と判断。開門を拒み続けた国の姿勢を追認した。

 国は福岡高裁の確定判決で「開門」、営農者らが開門差し止めを申し立てた裁判で「開門禁止」の相反する義務によって板挟みになった。国は漁業者側から開門するまで制裁金の支払いを科せられていたが、17年4月に開門せず、和解による解決を目指す方針を打ち出した。

 福岡高裁は請求異議訴訟の判決前、国側の主張に沿う形で「開門はせず、国の基金で問題解決を図る」という和解勧告案を提示したが、漁業者側が応じず協議は決裂した。

 開門訴訟を巡っては、有明海の漁業不振に苦しむ漁業者が2002年、開門を求めて提訴。佐賀地裁は08年、国に5年間の開門を命じる判決を言い渡した。福岡高裁は10年にこれを支持し、当時の民主党政権が上告せず確定した。(共同)

 

「差し戻しの公算大」 漁業者側弁護団長、非開門の流れに変化も

 非開門に傾いていた流れを変える潮目になるかもしれない判断だ。22日、最高裁が請求異議訴訟の弁論を開くことを決めた。確定判決の勝訴原告である漁業者側から「開門命令」というよりどころを奪った二審判決が見直される可能性が高まった。漁業者側の馬奈木昭雄弁護団長は「最高裁の判断を分析する必要があるが、審理を差し戻す公算が大きい」と歓迎した。

 22日の時点で、弁護団のもとには最高裁から弁論開始の通知は届いていない。弁護団は上告の際、複数の論点を提出しており、馬奈木氏は「通知を見れば最高裁がどの論点について審理不十分と判断したか分かる。最高裁の意図も見えてくるはずだ」と話す。

 現在、最高裁には諫早湾干拓事業の開門を巡る三つの裁判が係属している。一つは弁論開始が決まった請求異議訴訟。二つ目は諫早湾内の漁業者らが即時開門を求めた訴訟で、開門の流れを強めようと狙ったが、一、二審とも敗訴した。三つ目が、長崎地裁の開門差し止め判決を確定させないため、第三者の漁業者側が訴訟に参加できるようにする申し立て。これも福岡高裁が却下し、最高裁に上告している。

 弁護団は、三つの裁判を担当するのは同じ第2小法廷の裁判長である点に注目する。近く最高裁から届く弁論開始の通知と合わせ、残る二つの裁判に関する結論が送付される可能性もある。「同じ審理差し戻しでも、漁業者に有利なケースもあれば、そうでないケースも想定される」と分析する。

 最高裁の意図に不透明な部分は残るが、馬奈木氏は「司法の自己否定のような二審判決を維持することは難しいと最高裁は判断したのだろう。今度こそ国には柔軟な姿勢で紛争解決に向けて取り組んでほしい」と訴えている。

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