裁判員裁判を経験した人たちが出席した意見交換会=2019年3月、佐賀地裁

 市民が刑事裁判に参加する裁判員制度が21日、10年を迎えた。佐賀地裁ではこれまでに73件の裁判員裁判が開かれ、約400人の佐賀県民が裁判員を経験した。経験者からは司法を身近に感じたという声が上がる一方、精神的な負担を抱えて苦悩したり、公判の長期化で参加すること自体への難しさを指摘する意見が漏れた。

 今年3月、佐賀地裁で開かれた裁判員経験者の意見交換会。出席した30~70代の男女8人は、さまざまな感想を口にした。「裁判手続きが分かり、貴重な経験になった。ニュースや新聞をよく見るようになった」「人の人生を左右するので非常に悩んだ」「あの時の判断が正しかったのか繰り返し考えている」-。

 経験者を対象にした最高裁の各年のアンケートでは「非常によい経験」「よい経験」の合計が一貫して95%を超えている。ただ、こうした数字には表れない複雑な思いも潜んでいる。

 「参加しなければよかった」。出席者とは別の50代男性は、こうこぼした。佐賀地裁で数年前、ある罪に問われた被告の裁判員裁判に参加した。

 被告には知的障害があり、犯行の経緯に確信が持てない点があった。「認識不足のままではないか。自身の評議は間違っていないだろうか」。一睡もできないまま判決日を迎え、懲役の実刑が言い渡された。

 それから眠れない夜が続いた。「刑期が1年違うだけでも被告の人生にとっては大きなこと。いけないことをしたのでは」。精神科に通って睡眠導入剤を服用した時期もあった。今も判決前の焦燥感がよみがえり、夜中に目が覚める。

 裁判員裁判は当初に比べて審理が長くなり、候補の辞退率は上昇傾向にある。佐賀地裁の2017年の辞退率は62・7%で、全国平均を3・3ポイント下回ったものの高水準が続いている。

 佐賀地裁では昨年6~8月、殺人罪などに問われ、死刑を求刑された男性被告の裁判員裁判があった。裁判員裁判に限れば公判期間は地裁最長で、回数は最多の16回に及んだ。無期懲役が言い渡された日の会見で、ある裁判員は「期間が長く調整が難しかった。上司にも結構(苦言を)言われた」と負担感を明かした。

 この時の裁判員は6人で中高年の女性が4人を占めた。参加した若い男性は「仕事の関係で参加できない年齢層が多いと感じた。一般常識で判断するためにも、偏りがなければもっといい」と話し、裁判員の構成によっては結論も変わったとの含みを持たせた。

 裁判員裁判など刑事裁判で弁護人を務めてきた隈・園法律事務所(鳥栖市)の隈淳平弁護士は「市民の目が裁判に向けられ、分かりやすい内容になったという面ではメリットがあった」と制度を評価する。一方で「負担軽減のために被告が公判を受ける権利が制約されては意味がない。関係者で意見を交わし、よりよい制度を模索していくべき」と強調した。

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