「創造的な個性の発現」を目指す美術団体「二紀会」の巡回展が、6年ぶりに佐賀市の佐賀県立美術館で開かれている。

 昨年10月に東京・六本木の国立新美術館で開かれた本展の入選作約千点の中から、64作品を厳選した。さらに、佐賀支部所属作家による意欲作19点を加えている。

 佐賀にいながらにして、現代を映しだす第一線の作品に触れられる貴重な機会であり、美術ファンならずとも見逃せないだろう。

 二紀会は、その成り立ちが会の名称にはっきりと込められている。戦後まもない1947(昭和22)年、焦土から復興へと踏み出そうとしていた時期に発足。すでに画壇で名をなしていた9人の画家たちが、「戦前・戦中を仮に第一紀とすれば、ここからを第二紀として未来へと進んでいこう」と志を立てたという。

 それは、二紀会が掲げる宣言にも現れている。端的に言えば、従来の流派や表現方法にとらわれず、創造的な個性を生み出すという宣言である。

 その決意に、今回の巡回展でも触れられるだろうか。

 例えば、本展で最高賞の文部科学大臣賞を受賞した「ナガレの径」。会場で作品解説のマイクを握った画家が「これは危険な作品」と評したが、絵画の枠組みをはみ出しかねない危うさ。ロープや板など異なる素材を大胆に貼り合わせる手法で、ほほ寄せ合うように横たわる2人の人物の姿を表現した。本物のロープでくくりつけられた2人の身に何が起きたのか、おのずと想像をかき立てられる。

 現代画壇のトップを走る画家たちの作品も挑戦的だ。幻想絵画の世界を切り開いてきた山本文彦さんの「禱(とう)」のたたずまい、藪野健さんの「その日全てが集う」に漂う詩情…。200号の巨大キャンバスに込められた熱量に圧倒される。

 これらの主要作品に加えて、佐賀支部に所属する県内作家による意欲作も見どころだ。県内からは3人の作家が会員推挙、準会員推挙、準会員優賞に選ばれた。

 会員に推挙された木村安宏さん(神埼市)の彫刻「変容する花」はクスノキを素材に、頭部がバラの花びらの女性をとらえた。全体を白の彩色にとどめ、造形的な美しさを前面に出している。

 準会員最高の優賞を受賞した大石惠三さん(鳥栖市)の絵画「ひとり(月)」は、画家が「私の原風景」という、昭和期の鳥栖駅周辺の街並みをバックにたたずむ男性を叙情豊かに描いている。

 二紀会を率いる山本貞理事長も佐賀入りし、「佐賀支部の会員は、ユニークな発想をする人が多い。それぞれに個性があり、全国区になりつつある若手も出てきた」と評していた。

 私たちのふるさと佐賀がはぐくんだ感性が、どのような作品を生み出すのか、興味は尽きない。

 佐賀支部は現在、23人の作家が所属し、毎月の研究会を開くなどの活動を続けている。昨年、前身となる「グループ『轍(わだち)』」を立ち上げてから40周年を迎え、その存在感は増している。支部長の平方和善さんが「ひとつとして同じものはない」と胸を張るように、どの作品も刺激的だ。新たな時代の幕開けを飾るにふさわしい展覧会と評価したい。(古賀史生)

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