現在の国会議事堂が完成して初の議会が開かれたのは昭和12(1937)年1月。質問に立った長老議員、浜田国松は前年の二・二六事件以降強まってきた軍部の政治干渉を批判した。「軍人に対する侮辱」と反発した寺内寿一陸軍相に対し、浜田議員は「速記録を調べて、侮辱した言葉があったら割腹して君に謝する。なかったら君が割腹せよ」と迫った。世に言う「腹切り問答」である◆言葉に命をかけた議会人の気骨を思い返しては、近頃の「言論の府」は一体どうなっているのかと不安になる。忖そん度たく発言など舌禍が相次ぐ自民党が、今夏の参院選をにらみ「失言防止マニュアル」を配布した◆発言は「切り取られる」ことを意識して、タイトルに使われやすい「強めのワード」に注意を。特に歴史認識や政治信条、ジェンダー、LGBTについての個人的見解、事故や災害、病気や老いに関する配慮に欠ける発言、受け狙いの雑談口調の表現に気を付けて。こんな指南まで必要なセンセイ方とは…◆与党の足元を見てか、北方領土を巡る「戦争発言」の野党議員は辞職勧告の動きに「言論府が自らの首を絞める」などとSNSでうそぶいている。なめられたものである◆「政治の言葉」が軽くなる。深刻なのは失言ではない。言ったことは実行する、責任を取る、そんな気概の乏しさである。(桑)

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