患者さんの一番困っている症状を、「主訴」と呼びますが、これは、通常医師が尋ねなくてもご自身で言われます。しかし、症状の起こり方、特に始まりの様子に関しては、明確に自分から言われる場合と、そうでない場合があります。このことは、病気を診断する上で非常に重要な鍵となります。

 さっきまで普通に話していた人が倒れた、という場合は、「突然」起こったと考えられます。突然のことを「卒然(そつぜん)」とも言います。身体に害を受けることを「中る(あたる)」と言っていたので、「 卒然として中る」というところから「脳卒中」という言葉ができたようです。 脳卒中(脳出血や脳梗塞)は、血管が破れたり詰まったりして、突然症状が出る疾患の代表です。破れる・詰まるは血管だけではありません。肺が破れる(気胸)のも、尿の通り道に石が詰まる(尿管結石)のも、喉に餅を詰まらせる(気道異物)のも「突然」です。

 今朝は何ともなかったが、昼頃から寒気がして、熱が出てきた、という場合は、「急に」起こったと考えます。一昨日から喉が痛かったが、昨日から咳が出て、今朝から汚い色の痰も出るようになった、というのも「急に」です。かぜをはじめ、多くの感染症や「○○炎」という病気のほとんどはこのような経過です。いわゆる盲腸(虫垂炎)は急性です。「突然」と「急に」は似ていますが、突然起こるものの方が緊急性のある病気が多いようです。

 一方、症状の始まりの様子がはっきりと言えない場合もあります。数カ月から半年前頃から症状が起こり、だんだん悪くなってきたら、「徐々に」と言います。この経過の中には、治療に時間がかかる病気も含まれてきます。ずっと家で我慢しないで、2週間以上、気になる症状が続いていて、悪くなっていると感じるのであれば、早めに受診されることをお勧めします。(佐賀大学医学部附属病院 卒後臨床研修センター専任副センター長 江村正)

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