古代中国の五行説という思想では、四季を色に例えた。春は青、夏は赤、秋は白、冬は黒。ここから「青春」の言葉や柳川出身の詩人北原白秋のペンネームは生まれた◆今の時期に咲く花は、不思議と紫が多い。明治の作家斎藤緑雨はこんな警句を残している。〈青皇の春と、赤帝の夏と、行ゆき会あいの天そらに咲くものなれば、藤は雲の紫なり〉。フジに限らず、アヤメやハナショウブなど、春と夏の端境期に咲く花が、青と赤の絵の具を混ぜたような色をまとうのも道理かもしれない◆県立美術館で開催中の二紀展に足を運んだ。途方もないほど色を重ね、青々と塗り込めた空をキャンバスに眺めながら、自然が奏でる複雑な色彩にも負けない豊かな色合いに、芸術という人間の力を思う◆ユーモラスな「白猫」などで人気が高い熊谷守一(1880~1977年)らが戦後間もなく立ち上げた二紀会は具象、抽象にとらわれない自由な個性を競う。会場に並ぶ絵画や彫刻83点に向き合うと、技法の面白さや増殖するイメージに圧倒されるだけでなく、アーティストがどんなふうに人生を見つめているのかが伝わってくる◆四季の色はしばしば、人の一生にも例えられる。芽吹きを待つ黒い冬「玄冬」が幼年期だとすれば、今年72回を数える二紀展はまさに「白秋」、実りの季節である。会期は26日まで。(桑)

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