小さな体で大きな鳴き声のハルゼミ

 この季節、松原からなんとも言い表せない鳴き声が聞こえてきます。「ギーギーギー」「ムゼー、ムゼー、ムゼー」などと聞きなしされますが、人によって表現はかなり異なります。「どんな鳴き声ですか。鳴きまねしてください」とよく言われますが、それが難しいのです。

 この鳴き声の主は「ハルゼミ」、またの名を「マツゼミ」といいます。季節外れと思われるかもしれませんが、春から初夏にかけて現れ、松林に生息しているので、この名前がついています。沖縄以外で最も早く鳴き始めるセミです。

 体は黒く3センチほどと小さく、しかも梢(こずえ)に止まって鳴くそうで、声はすれど姿を見ることはめったにありません。そしてその小さな体からは想像ができないほどの大きな声で鳴きます。1匹が鳴き始めると、それに合わせて他も鳴き出すので、日常会話が成り立たないくらいのうるささです。

 その昔、豊臣秀吉が虹の松原を通った時にあまりにセミが鳴くので「うるさい!」と怒鳴って以来、セミの声が途絶えたと言い伝えられています。それが「虹の松原にはセミがいない」という「七不思議」につながったそうですが、実はハルゼミは春に鳴くセミで、夏には小さな声で鳴くニイゼミしかいないので、セミがいないという話になったようです。

 最近では松くい虫による松の減少などでハルゼミの生息地は各地で減少しているそうです。松を保全することがハルゼミの保全や虹の松原の七不思議の継承にもつながります。

 いつでも鳴いているかというとそうではなく、日が差し、気温が上がったころに鳴き始めます。きょうは聞くことができるでしょうか。運試しのような気分で松原に出かけます。

(NPO法人「唐津環境防災推進機構KANNE(かんね)」事務局長・藤田和歌子)

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