内閣府が3月の景気に関する基調判断を「悪化」に引き下げた。これまでは、数カ月前に景気がピークを迎えていた可能性を示す「下方への局面変化」としてきたが、今回は、それより1段階厳しい表現で、景気が既に後退している事態を示したと言える。「悪化」の判断は6年ぶりだ。

 20日に発表される1~3月期の実質国内総生産(GDP)も、2四半期ぶりのマイナス成長が見込まれており、戦後最長の景気拡大が続いているとする政府は認識を改めるべきだろう。

 世界1、2位の経済大国である米国と中国が対立している貿易摩擦は激化する一方で、決着が見通せない。この影響などから中国経済は減速し、日本企業の業績を圧迫し始めた。米国による対中関税の引き上げは、最終的に米国の消費者が負担するケースもあり、いずれ米国経済にも悪影響を与えるだろう。

 外需の落ち込みのみならず、企業が世界で展開するサプライチェーン(部品の調達・供給網)も大がかりな再構築を迫られる可能性もある。海外市場に多くを依存するアキレス腱けんが危機にさらされている。日本経済は正念場を迎えたといっていいだろう。政府、日銀には内外の諸情勢に目を凝らした細心の政策運営を求めたい。

 海外要因については、日本が直接、影響を及ぼすことはできないのは当然だが、手をこまねいているばかりでは、政策当局としての責任は果たせまい。遠回りかもしれないが、国際協調や自由貿易の重要性、世界貿易機関(WTO)改革の必要性などを粘り強く国際社会に訴えて事態の改善を目指さなければならない。

 加えて日本は6月の20カ国・地域(G20)首脳会合の議長国だ。世界中で深刻な状況を引き起こしつつある貿易摩擦に主要国としてどう対応するのか、責任を持って方向性を打ち出す立場にある。米国や中国に対して、言うべきことは言うリーダーシップを安倍晋三首相には求めたい。

 景気の腰折れを防ぐには教科書的には、財政、金融面のてこ入れが検討課題になる。しかし、双方ともに追加政策の余力は極めて乏しいのが実情だ。国と地方の債務残高はGDP比約2・4倍と先進国で最悪の状況、日銀の大規模緩和はマイナス金利にまで踏み込んでいる。

 非常に深刻な事態が想定される場合は、緊急避難的な措置として、てこ入れを検討することがあるかもしれないが、必要性やその政策による副作用などを精査し、規模は限定的であるべきだろう。

 この文脈で、今年秋に予定されている消費税増税についての議論が与野党で活発になってきた。夏の参院選を控えた駆け引きの要素もあるのかもしれないが、財政再建は「政争の具」にするべきではないだろう。あくまでも政策論としての妥当性や実効性を議論の対象とすべきだ。景気の腰折れは防がなければならないが、同時に、日本政府の財政再建への取り組みを市場がさらに疑問視するような事態も避けるべきだ。

 外需が不調なら、内需を喚起することが重要になる。企業業績は多少落ち込み始めているとはいえ、利益水準は高い。内部留保も豊富だ。民間企業を、さらなる賃上げや積極的な設備投資に誘導するような政策に知恵を絞りたい。(共同通信・高山一郎)

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