2013年から2018年にニューヨークの出版社から出した3冊の詩集(手前と奥の表紙が塩月悠さん)

髙野吾朗さん「日曜日の心中」表紙(表紙画は塩月悠さんの「drip」)

初の日本語詩集を出版した髙野吾朗さん=佐賀市鍋島町の佐賀大学医学部

 佐賀大学医学部で英語を教えている高野吾朗准教授(52)=佐賀市=が、日本語詩集「日曜日の心中」を出版した。これまでに米ニューヨークの出版社から英語の詩集を3冊発表しており、今回が初めての日本語による詩集となる。いったん英語で書いた詩を日本語に翻訳し直す独特の過程を経ており、作品は無国籍な雰囲気が漂う。

 3年前に妻を亡くし、作品には妻の面影が火花のようにちらつく。広島市出身で原爆文学研究会に所属していて、戦争や原発などのモチーフも散見される。それら複数のイメージがひとつの作品中で複雑に絡み合い、渦巻く。

 高野さん自身が「一行一行は分かりやすく、全体は神秘的に」と話すように、文体そのものは平易だが、読み進めるうちに文意が抜け落ちるような感覚があり、読む者を戸惑わせる。

 過去に出版した英語詩は、日本語詩を英語に訳して作り、今作は逆に英語詩を日本語に訳した。英語と日本語を行き来する中で、作品は国籍を失う。

 高野さんは24歳でテレビ局に就職。阪神・淡路大震災の取材中、被災者から「地震に遭ってから来い」とののしられた。「共感するふりをして近づき、利用していないか」。マスコミの社会的価値と仕事のやり方に相反するものを感じるようになった。

 本来多面的である人間を一面的にしか捉えず、伝わりやすい番組を作る―。番組を完成させる達成感の裏で、人間本来の揺らぎを無視する罪悪感が頭を離れず、テレビ局を退職。東京大学大学院で米国文学の研究に打ち込んだ後、37歳でハワイ大学に進み研究から創作へと舵を切った。

 今作の表紙は過去の英語詩集2冊に続き、佐賀大学大学院卒の画家・塩月悠さん(37)=長崎市在住=の作品が飾る。

 詩作の前には、生活の中で心に留まった出来事を手当たり次第に書きとめる。出会った人や読んだ本、テレビのニュースなど関連性のない情報をつなげて一つの詩を作る。高野さんは「そうすることで、自分の人生の一分一秒が残らず輝く気がする」と語る。

 ▼B5判変形、133ページ、税込み2160円。問い合わせは花乱社、電話092(781)7550。

このエントリーをはてなブックマークに追加