藪野健「その日全てが集う」(F200号)

 目に染みるようなブルーの海をバックに、詩情をたたえた街並みが広がる。イタリア南部の都市コンヴェルサーノ。ローマやギリシャなど多様な文化が溶け合う。結婚式で多くの人が集うカテドラーレ(大聖堂)や、かつて貴族が住んでいた館など、重厚なたたずまいの建物が、その間を縫う路地とともに、格調高い空間を織りなす。

 滞在中、スケッチしていると、地元の人が気さくに声を掛けてきた。「貴族の館の末裔(まつえい)は『公開していない』と言いながら特別に案内してくれた。他にも『私の家は描かないのか』という人もいてね。地域への誇りを感じた」。建物一つ一つの美しさに加え、長い歴史が息づく街の“体温”までもキャンバスに込める。

 藪野健さんは1943年生まれ。2009年に日本芸術院賞を受賞し、日本芸術院会員に。二紀会副理事長。東京都。

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