経団連と大学側が通年採用を拡大することで合意した。春の新卒一括採用に偏った慣行を改め、採用活動の多様化を目指すが、日本型雇用の変化をもたらす可能性がある。具体化には慎重な議論が必要で、特に学業の尊重と中小企業への配慮が求められる。

 経団連と大学でつくる産学協議会が「新卒一括採用に加え、複線的で多様な採用形態に、秩序をもって移行すべきだ」と提言する中間報告をまとめた。今後、政府と協力して新たな仕組みづくりを進める。

 現在の新卒一括採用には、海外に留学している学生が夏ごろ帰国すると採用時期が終わっていて不利になるなどの問題があり、時代に合わなくなったとして、経団連と大学が改善策を協議してきた。経団連が会員企業の面接解禁日などを定めた現行の就活ルールは、2021年卒業の学生まで維持される予定で、新たなルールの導入は22年卒以降になる。

 報告は通年採用への一本化を提言しているわけではなく、企業の多くも当面は新卒一括採用を基本とするとみられるが、今後、通年採用が広がれば影響は大きい。予想される課題を整理し、丁寧に制度設計をしなければならない。

 欧米では即戦力の通年採用が標準的なのに対して、日本では新卒者を一括採用し、終身雇用を原則として企業内で職業教育をするのが一般的だった。しかし、このシステムには既卒者や留学生などは選考の網からこぼれ落ちるという欠点がある。通年採用の拡大などが進めば、企業はより多様な人材を獲得し、学生は就職の機会が増すことを期待できるだろう。

 ただ、報告が通年採用の拡大の狙いとして学業に専念できる時間の確保を挙げていることには疑問がある。就職活動がかえって長期化し、学業に影響が出る心配があるからだ。すでに学生の間には、いつ企業の選考が始まるか分からないため、前倒しで就職活動を始めなければならなくなるのではないかという不安の声が出ている。

 会社説明会の解禁を大学3年生の3月としている今の就活ルールでも、学業に支障が生じている。通年採用が普通になれば、1、2年生から企業の選考活動が始まり、学生は勉強に集中できなくなるかもしれない。講義のある平日でも学生を呼び出す企業が多い現状を見れば、これは無用の心配ではない。企業はまず学業の尊重を採用方針の前提にするべきだ。

 大手企業の多くがこれまでの横並びをやめて通年採用を始めれば、優秀な人材が大手企業に集まり、中小企業の人材獲得が困難になる恐れもある。現在でも立場の弱い中小企業は大手企業の動向を見ながら採用活動をしており、不利を強いられている。中小企業への影響に配慮しなければならない。

 通年採用の拡大を中心とする採用の多様化は、終身雇用などを柱とする雇用慣行の見直しにつながることも考えられる。しかし、終身雇用の縮小が雇用の不安定化を招くことがあってはならない。転職しやすい環境を整備するために、企業は中途採用の拡大に、政府は再就職支援の強化に取り組む必要がある。

 通年採用の拡大は広範囲に大きな影響を及ぼす。経済界、大学、政府は十分に時間をかけて制度づくりを進めてほしい。(共同通信・柳沼勇弥)

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