男の三大願望というのは、プロ野球の監督、オーケストラの指揮者、そして風呂屋の番台に座ることですな。そんなスピーチをしたら本当に指揮を頼まれた、と上方落語の桂米朝さんが生前語っていた。〈最初に棒を振りおろすところを特訓してもろうて、あとは音楽に合わせて踊ってたようなもんですわ〉(関容子『再会の手帖』)◆現実とは大概こんなものだが、ではプロ野球の監督はどうだろう。広島の地元紙中国新聞には鳥栖出身の緒方孝市監督が試合後に語った「緒方語録」が載っている。失策が続けば「反省するところは反省して、しっかりまたやっていく」。自ら退場処分を受ければ「冷静になれなかった事を反省している」…周囲を責めず反省、反省。求道者のような心持ちでないと務まりそうにない◆同じ監督でも、10試合でわずか1得点というチームを率いるのは並大抵ではなかろう。サガン鳥栖の金明輝(キン・ミョンヒ)新監督である。「一日でも早く勝利できるよう取り組む」。絶対に負けられない局面ばかり頼りにされる指揮官の胸中を想像してみる◆指揮者は難しい、監督も大変。ならば風呂屋の番台に…って、この手の下心が近ごろ一番怒られますよ。銭湯文化と同様、男の願望も消え入りそうな時代である◆せめて、ひいきのチームの躍進を。この願望だけは実現してもらわないと。(桑)

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