小城市出身の写真家・池田宏さん=小城市荻町の小城公園

北海道大学が研究用として収集した遺骨が、遺族に返還された「再埋葬の葬列」=北海道・浦河町(2016年7月撮影)

池田宏さん「AINU」書影(提供)

 10年以上にわたってアイヌの人々を撮り続けてきた写真家・池田宏さん(37)=小城市出身、東京都在住=が、写真集「AINU」を出版した。90歳を超えた老人の肖像から生後半年の赤ん坊まで99点を収めており、「現代のアイヌ」の日常を浮き彫りにしている。池田さんは「この写真集が、アイヌを知る機会になれば」と語る。

 収録写真はカラオケに興じる日常や、振り袖姿の成人式などをありのままに捉えている。伝統的な衣裳やアイヌ独特のしきたりを切り取った一枚もあるが、従来のアイヌのイメージにはとどまっていない。

 池田さんが北海道へ向かったのは2008年。修学旅行で記念館に立ち寄ったり、大学の集中講義の選択肢にアイヌ語があったりした記憶から撮影のテーマに選んだ。

 アイヌ伝統の機織りで知られる集落・二風谷にぶたにで、印象的な出会いがあった。機織りの女性に「純粋なアイヌの人っているんですか?」と尋ねると「純粋な日本人とは何ですか?」と逆に聞き返された。言葉がなかった。

 日本人とは、アイヌとは何か―。10年たってもその答えは持ち得ないが、今も厳然と残る差別の実態を知った。「アイヌという民族は存在しない」とする一部の主張には反感を覚える。

 一方で、アイヌを「自然と共生する民族」と規定して差別を解消しようとする動きにも同意できない。「『アイヌはこういうもの』とステレオタイプなイメージに当てはめようとすることに違和感がある。それで差別が減ったとしても、生き方が限定されてしまっては息苦しくなる」

 池田さんはスワヒリ語を学んだ大阪外国語大学在学中、約10カ月かけて中国からポルトガルまで旅をした。初めて買ったカメラで同世代の若者を撮影したのがきっかけで、写真の道へと進んだ。

 写真集に収めたカットを池田さんは「出会いと別れの副産物のような写真」と表現する。

 出会っていきなり撮影するのではなく、コミュニケーションを重ねて相手を知った上でシャッターを切る。表紙に選んだ、黒く深い瞳でこちらを見返す青年の一枚からは、被写体の青年の池田さんへの信頼が伝わってくる。

 次回作はアイヌの人々20人前後のインタビューをまとめようと構想する。「無知は差別のきっかけのひとつになる。写真集とは違ったアングルで、読み物としてアイヌを知る一助にしたい」と語る。

 ▽写真集「AINU」はリトルモアから1800部発行、A4変型判128ページ、税込み3132円。

このエントリーをはてなブックマークに追加