祝祭のように、令和が明けた。

 平成が昭和天皇の崩御という、否応ない重苦しい雰囲気をまとって訪れたのに対し、今回はカウントダウンで改元の日付が変わる瞬間を待つなど、国民参加の一大イベントさながらの明るさが印象的だった。

 平成という時代は、国民が皇室を肯定的に受容する歴史でもあった。

 「象徴としての私を受け入れ、支えてくれた国民に心から感謝します」。きのう前天皇陛下が退位礼正殿の儀で述べられた在位中最後の「おことば」は、国民への謝意だった。

 前陛下はこの30年、憲法が定める象徴天皇制に適合した新しい皇室像を模索。「皇軍」の一員として戦地に散った戦没者への慰霊の旅を重ねる一方、相次ぐ自然災害の被災地に寄り添ってこられた。

 一貫して弱者に温かいまなざしを注ぐご夫妻の姿に国民は信頼を寄せ、「生前退位」という選択も超高齢社会で「終活ブーム」が続く日本社会を投影し、共感を持って受け入れられたのではないか。

 平成の終焉(しゅうえん)とともに、ご夫妻の功績をたたえるムードは一層高まったが、それはお二人の人間性に対する敬愛の念であり、残念ながらこの「代替わり」を機に、制度としての天皇制を考える議論が国民の間に湧いたとは言い難い。

 神性をまとう天皇制と民主主義との共存や皇位継承を巡る課題は多い。改元のタイミングは外国人労働者の受け入れを拡大する入国管理法の改正と重なった。将来的に「日本人」という枠組みが大きく揺らぐ可能性もあり、「国民統合の象徴」としての役割はますます重くなっていくはずだ。

 新天皇が即位にあたり、何を国民に語り掛け、新しい時代に即した皇室像を模索していかれるのか注視しながら、天皇制を持つ私たちの社会のあるべき姿について、改めて思いを巡らせたい。

 共同通信社が18歳以上の有権者3千人を対象に行った世論調査によると、平成が「良い時代だった」と評価する声は「どちらかといえば」を含め、73%を占めた。一方で、社会全体が他者に対して「不寛容」になったと感じている人は57%に上った。

 未曽有の自然災害が相次ぎ、デフレや人口減少で経済の地盤沈下が進んだこの30年は、それでも国内的に見れば「戦争のない平和な時代」。自分は災害やリストラの当事者でもないし…世論調査から浮かび上がってくるのは、こうした「内向き」の国民意識である。

 改元の祝賀ムードもまた、「日本の固有性」に誇りを見いだそうとする内向性を読み取ることができる。かつての平成改元が「自粛」ムード一色だったことを思い返せば、今度は逆に「時代のリセット」を歓迎する空気に塗り込められただけで、一斉に同じ方向を向く国民性に変わりはない。新時代の到来を素直に喜びつつ、こうした複雑な思いも抑えきれない。

 令和で人心が一新したにせよ、経済界が「敗北の時代」と評した日本の退潮局面は依然続く。とりわけ人口減少が進む地域社会の疲弊は深刻である。この時代を覆った「内向き」のエネルギーを、足元を見つめ直すきっかけへと前向きに転化できるか。新元号のスタートが日本再生の起点になることを願う。(論説委員長・桑原昇)

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