この春は、いつもの年度初めに増して慌ただしかった。新元号発表の号外発行、統一地方選の前半・後半戦と続き、30日には天皇退位を控えている。5月1日は即位、令和元年のスタートであり、大型連休のさなかだが、再び号外を発行する。

 号外発行を事前に知らせるというのも妙な感じだが、ネット社会の進展に伴い、号外の意味合いは変わってきた。印刷、配布には時間を要し、手にした時には既に多くの人が知っている。そんな時代に号外を配る必要性は薄れており、ウェブで速報する方が手軽で便利なのは間違いない。

 それでも、歴史に刻まれるような出来事の際は号外を発行する。「その時」を記憶しておきたいと思う人にとっては貴重な記録であり、時間を共有した記念にもなる。新元号の号外を求める都市部の人波を見て、情報が瞬時に流れていってしまう時代だからこそ、手元に残る記録が重要だと改めて感じた。

 新元号発表後も高揚感は続き、祝賀ムードの中で改元が迫ってきた。改元によって日々の生活が何か変わるわけではないが、気持ちのありようは変わるし、変えられもする。部屋の空気を入れ替えるように、少しでも清新な気持ちにリセットできればいい。

 一方で、知り合いの男性が「もう少し、静かな雰囲気の代替わりがいいんじゃないかな」と話していたのが気にかかっている。心を落ち着けて平成という時代を振り返り、これからどう生きていくか、思いを巡らせたい。そんな人たちにとって、お祭り騒ぎのような報道はうっとうしく、思考を邪魔するのかもしれない。

 代替わりの報道は、いよいよ佳境に入る。ここ数日は多くの紙面を割いていくが、いろんなメディアがある中で新聞は自分のペースで読み進め、途中で考えにふけったり、思い出に浸ったりもできる。思考とセットで触れるには、活字メディアの新聞が適しているのではないだろうか。

 時代の節目、浮き立つ社会の動きを含め、今の空気感を記録したい。それと同時に、一人一人が平成を回顧して自身の歩みと重ねたり、令和に思いをはせたりするような、じっくりと読める特集も届けたい。ここは、新聞の力の見せどころである。(大隈知彦)

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