文部科学大臣賞を受賞した田中忍さん=嬉野市嬉野町の一位窯

池田大地さん「海に浮かぶ街」(縦200センチ、横140センチ)

 嬉野市嬉野町の一位窯で釉裏紅(ゆうりこう)を追求する田中忍さん(56)=日本新工芸家連盟審議員=が「第41回日本新工芸展」で2席にあたる文部科学大臣賞に輝いた。近年取り組んでいる、ナンキンハゼをモチーフとした白磁の器が高い評価を受けた。併せて開かれた「第2回学生選抜展」大学等部門では、染色の池田大地さん(佐賀大4年、長崎県出身)=顔写真=が上位入賞を果たした。

 田中さんの受賞作「鵲(かささぎ)の木-i」(直径約60センチ、高さ約20センチ)は、一昨年から取り組むナンキンハゼがテーマの連作。中国・元の時代が起源といわれ、発色の難しい釉裏紅の技法を用い、紅葉で赤く染まったナンキンハゼの葉を描いた。片方の口をくぼませ、ゆったりとした形の白磁に、柔らかい色調の赤い葉が映える。釉裏紅と呉須を組み合わせて葉の奥行きを出し、紅葉時に顔をのぞかせる白い実をマット釉で表現した。

 モチーフのナンキンハゼは、田中さんの自宅近くに数年前まで立っていた。紅葉時の美しさだけでなく、春先はカササギが営巣するなど、地域のランドマーク的存在として田中さんの心に深く刻まれている。田中さんは「新工芸展に出品して20年あまり。目標にしていた賞だったので、本当にうれしい。釉裏紅の表現の幅をさらに広げたい」とさらなる精進を誓った。

 また、一般公募には129点の応募があり、県内からは染色の山下常子さん(小城市)が入選を果たした。

 特別企画として開かれた学生選抜展の大学等部門では、池田さんのろうけつ染め「海に浮かぶ街」(縦200センチ、横140センチ)が、最優秀賞に次ぐ「谷中田美術賞」に輝いた。イタリア・ベネチアの情景がモチーフで、初めて訪れた海外の美観を形に残したいと作品化した。ろうを無造作に配置して意図的ににじみをつくるなどして、叙情的な世界観を創り出している。

 池田さんは「最優秀賞を狙っていたので悔しさもあるが、今後の制作の糧になる。完成度と落ち着きのある“大人の作品”を生み出したい」と抱負を語る。大学等部門には35点の応募があり、8点が入賞した。

 ▼日本新工芸展は5月15~26日、東京都の国立新美術館で。一位窯の陶器市は今月27~29日。問い合わせは同窯、電話0954(42)0867。

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