沖縄・石垣島を訪ねた故高倉健さんは、地元の小中学校の合同運動会で、見たことのない競技を見物した。島のおじいちゃん、おばあちゃんたちが、わらをよじって長縄を作る「ナワナエ競争」。子どもが少なくなり、住民総出でなければ運動会が開けない学校で、誰もが楽しめる競技をと考え出されたらしい◆真剣な表情で縄を編むお年寄りたちに、校庭のみんなが声を張り上げて応援している。いつの間にか健さんも手をたたいて応援していた。〈ぼくの仕事は俳優だから、よくひとから拍手される。でも、拍手されるより、拍手するほうが、ずっと心が豊かになる〉(『南極のペンギン』)◆女子マラソンの名指導者、小出義雄さんが死去した。92年のバルセロナ、96年のアトランタで五輪連続メダルの有森裕子さんを育て、「お前は世界一になれる」と毎日励まし続けた高橋尚子さんは2000年のシドニー五輪で日本女子初の金メダルに輝いた。ひたすらにピッチを刻む教え子たちに、沿道から誰よりも熱い拍手を送った人だった◆〈メダルのために人生があるのではない。人生のためにメダルがあるのだ〉。夢に向かって懸命に生きることの大切さを説いた。そこには「忍耐」や「刻苦精励」を強いる古めかしい指導者像はなかった◆80歳。平成のマラソン史を輝かせた名伯楽が逝った。(桑)

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