トランプ米政権は日本を含む全ての国にイラン産原油の輸入停止を要求した。違反した国や企業には米政府が経済制裁を科す構えだ。

 原油収入はイラン経済の生命線であり、イランは猛反発している。原油市場は急伸の兆しを見せ、世界経済に与える悪影響や中東の緊張激化が危惧されている。

 国際原子力機関(IAEA)は、イランが2015年に米国ら6カ国と結んだ核開発制限の国際合意を順守していると何度も保証しているのだが、トランプ政権は聞く耳を持たないようだ。

 米国は昨年、イランとの核合意から一方的に離脱し、イランがミサイル開発や中東不安定化の要因となっているとして制裁を順次復活させてきた。

 日本や中国、韓国、インドなど8カ国が輸入するイラン産原油は世界経済に与える影響が大きいため、制裁の適用除外としていたが、最大限の圧力政策に転じて、今回除外の終結を決めた。全輸入量の約5%をイランから得ている日本は除外継続を米国に求めていたが、かなわなかった。

 反発するイランからは、原油輸出の大動脈であるホルムズ海峡封鎖の警告も報じられている。

 中東に緊張をもたらし同盟国の悪影響をも顧みない理不尽な姿勢に、日本は声を大にして異を唱えるべきだ。安倍晋三首相は4月末にトランプ大統領と会談する予定だが、日本の考えを伝える機会になるはずだ。かつて日本の首相は経済摩擦などで米大統領に日本の国益を伝えたし、日本・イランの友好継続を米国に認めさせたこともある。

 米国の決定は単なる呼び掛けでなく、イランと商取引を続ける企業を米市場から締め出すなどの制裁の脅しがついている。オバマ政権が核合意を結び日本企業はイランに復帰したが、トランプ政権の正反対の対応で今度は撤退を余儀なくされている。最近、西欧諸国は企業がイランと商取引を続けても米国の制裁対象にならないような決済システムを構築したが、効果を上げていない。

 イラクやトルコなど周辺国は米国に探知されないように米ドルを使わない決済や物々交換をイランと続けているというが、イラン経済は欧州や日本との関係の細りで、混乱に見舞われている。

 米国はサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)が増産して穴埋めするとしている。それでも調達先の変更など煩わしい作業が必要だ。

 もちろん、イランは中東混乱の要因の一つである各地の民兵組織への軍事支援を停止すべきだし、弾道ミサイルの開発もやめるべきだ。より長期的で包括的な核合意の交渉に臨んでほしい。

 しかし、イランの完全封じ込めを目指す今の米国の政策では、外交的な余地はないし、イランの比較的穏健な現政権も国内強硬派に配慮して硬化せざるを得ない。米国は今月初旬にはイランの国家機関である革命防衛隊をテロ組織に指定もしている。

 米国の決定の影響は多方面に広がりそうだ。イラン産原油の最大の輸入国は中国で、ヤマ場を迎える米中の貿易交渉でその輸入問題という新たな課題が生ずることになる。

 また北朝鮮の金正恩委員長は、イランとの核合意をほごにして制裁を復活する米国を目にして、核放棄の合意を結ぶ価値を見いだせないのではないか。(共同通信・杉田弘毅)

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