4月に入った春休み。佐賀市の女性(37)は、仕事を終えると、入学式間近の長男を迎えに行った。行き先は入学する学校の敷地内にある放課後児童クラブ(学童保育)ではない。7キロ以上離れた保育園が運営する民間の学童だ。

 希望を出していた佐賀市から「受け入れが困難」と知らせる文書が届いたのは2月下旬だった。「学童、落ちた」。確認後すぐに、夫にメールした。学童保育の待機の番号は10番台後半。保育士として3年ぶりに現場復帰を控えたさなかの通知だった。

 6歳と2歳の子どもを育てる。保育園は、自身の保育士復職に伴う加点制度も影響したのか、内定通知が届いた。だが学童には、そうした加点制度はない。「優先され、入りやすい」とされる新1年生でさえ待機となる現状に「結局、行政は変わっていないんですよね」とため息をついた。

 保育園の待機児童は社会問題として認知されてきたと感じる。だが、その数年後の小学生が利用する学童保育の厳しい現状が世間に知られているとは思えない。「子育ての施策が場当たり的。もっと根本から、人を育てることの大切さを考えてほしい」と思う。

 佐賀市の女性会社員(44)は、新2年生の長男の「待機」の知らせに視線を落とした。“ママ友”の話から、うすうす「厳しいかな」とは思っていた。番号は20人以上が待つことを示していた。正社員で働き、年々職場での責任も重くなる。やむを得ず子ども用の携帯電話を買い、長男と戸締まりの練習を重ねた。

 少子化にもかかわらず、県内の学童保育の需要は年々、高まっている。学童保育は、玄海町を除く19市町で実施し、2017年には登録児童数が1万人を超えた。クラブ数も259カ所(18年5月現在)と、5年前の1・3倍に増加した。

 ただ、「安心できる放課後を」というニーズは満たせていない。登録したが、利用ができない待機児童は18年5月1日現在、佐賀、鳥栖市など9市町で264人。5年前の2・8倍に膨らんだ。受け付け窓口で「高学年は無理」と言われたり、「いっぱいで入れそうにないから」と登録をやんわりと断られたりするケースもある。「隠れ待機」を入れると、さらに増える。

 学童保育の申し込みは、年度ごとに必要だ。通知は2月ごろ、保護者に届く。学童に入れるのか。待機になって子どもだけで留守番をさせざるを得ないのか。頼れる「誰か」を自力で探さなくてはいけないのか-。平日は習い事をすべて入れて、放課後の時間を埋める、という保護者もいる。

 「春は、不安が募る季節になってしまいました」。女性会社員は嘆く。佐賀県は「子育てし大(たい)県」を掲げるが、その実感はない。

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 共働きや一人親の家庭の小学生が放課後を過ごす「学童保育」。施設不足に加え、配置する支援員が不足し、待機児童が増え続けている。県内の現場から学童保育の現状を見つめた。

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