プロ野球史上、最も注目されなかった日本シリーズは1964(昭和39)年の阪神―南海の大阪対決といわれる。3勝3敗で迎えた最終戦は何しろ、東京オリンピック開会式の日だったのだから◆南海の先発は前日に完封勝利したスタンカ。初の連投で「6回くらいまで」と送り出された彼が、約束通り阪神打線を抑えてベンチに戻ると、鶴岡一人監督は「もうワンイニングいこか」。7回も無得点。「もうそろそろ…」といわんばかりのスタンカに、鶴岡監督は「もうワンイニングいこ」◆今春から外国人労働者の受け入れが拡大された。すでに都市部のコンビニやホテル、地域の工場近辺で、働く外国人は見慣れた光景になっている。その上さらに介護や建設、農業など人手不足の現場であてにしようというのだから、プロ野球最多勝の名将も顔負けの人使いである◆営業時間も守れないと現場から悲鳴が上がっていたコンビニ業界で、脱24時間営業やレジ省力化などの動きが出てきた。業界の苦境の裏返しではあろうが、慌てて制度を変え“助っ人”を頼む前に、見直すべきこともある◆若者の流出が続く地方ほど人材難は深刻だ。雇用や働き方だけでなく産業構造のあり方、都市との格差是正など熟慮が必要なときである。そのための論議なら、「もうワンイニング」も大いに結構なのだが。(桑)

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