認知症や知的障害などで判断力が十分ではない人を支援する成年後見制度を巡り最高裁は、本人の財産から後見人に支払われる報酬の算定方法を見直すよう促す通知を全国の家庭裁判所に出した。現在は家裁が財産額に応じて決めるが、医療や介護の枠組みを整えるなどの生活支援に重点を置き、業務量や難易度を反映させるようにする。

 多くの場合、後見人は弁護士や司法書士などの専門職。報酬の仕組みが不透明で高いと利用者らに不満の声が広がっていた。また後見人について、利用者側の意向や生活状況の変化に合わせて柔軟に交代を認めたり、利用者本人をよく知る親族らの選任を優先したりする考えも示している。

 厚生労働省の推計では、認知症の高齢者は2015年に520万人となり、団塊の世代が75歳以上となる25年には高齢者の5人に1人に当たる700万人に達する。本人に代わり財産管理や悪徳業者との契約取り消しなどを行う後見人は高齢化社会でますます重きを成すとみられるが、制度の利用者は18年末の時点で21万8千人にすぎない。

 利用拡大の鍵になりそうなのが、全国の市町村で利用者や親族の相談に乗り、家裁や後見人とも連携する「中核機関」の設置だ。17年度に始まったが、設置済みはいまだ4・5%。この基盤整備を加速させなければならない。運用改善の成否もそこにかかっている。

 成年後見制度は民法などの改正を経て00年に導入された。本人の判断能力は「ない」「著しく不十分」「不十分」に分類され、それぞれ「成年後見人」「保佐人」「補助人」からサポートを受ける。後見人は財産に関する全ての法律行為を代行できる。保佐人や補助人は一定の制限がある。

 このうち後見人の利用が最も多く、全体の8割を占める。本人や配偶者、親族、自治体などの申し立てにより家裁が弁護士や司法書士などの専門職、親族から後見人を選ぶ。報酬に全国一律の基準はない。東京家裁の場合は基本額が月2万円で、管理する財産が多くなるほど上がっていく。

 だが利用者から「何もしてくれない」との声があり、厚労省が知的障害者施設を調べると、後見人が本人に面会に来る頻度は「年1~2回」「ほぼ来ない」が4割近くに上った。このため財産管理に偏った算定方法を改め、生活支援を重視。個別の業務実績に応じ報酬を支払うことにした。

 後見人の6割以上は専門職。制度発足当初は親族が多かったが、親族による着服などが相次いだことから、専門職が増えた。ただ専門職の不正も後を絶たない。そんな中で最高裁は親族優先にかじを切った。最近は家裁が不正防止のため後見監督人を選任するケースが増えているとはいえ、チェック体制を一層強化する必要があるだろう。

 政府は17年に定めた成年後見の利用促進計画で17~21年度に市区町村が中核機関を設置するとした。ところが昨年10月の時点で、全1741市区町村のうち設置済みは4・5%の79自治体。77・3%は予算確保が難しいことなどを理由に設置時期を未定としている。

 本格的なてこ入れが求められる。制度には、判断能力が衰える前に身内や弁護士と契約し、将来の財産管理を託す「任意後見」もある。超高齢化社会に向けて、利用拡大を安心につなげたい。(共同通信・堤秀司)

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