悲しいかな、「新婚旅行はヨーロッパへ」などという経験がないものだから、パリの大聖堂が煙に包まれるニュースを見ながら、ふと連想したのはアニメ映画の一場面だった。捕らわれの王女を救い出すため、古城に火を放つ怪盗…ルパン三世である。原作者モンキー・パンチさんが81歳で亡くなった◆「ルパン三世」の連載開始は1967(昭和42)年。新作執筆を持ち掛けられ、「即答しないと仕事がもらえない」と、わずか10分で構想したという。主人公は映画「007」から、ボンドガールは峰不二子、相棒の次元大介は映画「荒野の七人」のジェームズ・コバーン、石川五ェ門は『燃えよ剣』(司馬遼太郎)の沖田総司と、当時の人気キャラクターを下敷きに◆原作はペンネームさながらに無国籍な「大人の劇画」だが、ルパンのイメージは声優の故山田康雄さんの「ふぅじこちゃ~ん」であり、愛らしい王女の心を盗む「カリオストロの城」は、宮崎駿監督の出世作として語られる。息の長い名作はこうした「大衆化」から逃げられないが、原作者の「本音」も聞いてみたかった気がする◆〈本質よりもまずスタイルを。本当の感情は表に出さない。人間関係は駆け引きだ…〉。精神科医の香山リカさんは原作から“人生の真実”を学んだと書いている。ひとを大人にする漫画家だった。(桑)

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