しん窯の文字盤が採用された機械式時計「セイコー プレザージュ」プレステージラインの有田焼ダイヤルモデル(左が多針モデル)

 腕時計メーカー、セイコーウオッチ(東京)が展開する日本の匠の技を取り入れた機械式腕時計のシリーズに、西松浦郡有田町の窯元「しん窯」(梶原茂弘社長)が手掛けた有田焼の文字盤が採用された。伝統の技による淡い青みがかった光沢と、佐賀県窯業技術センターの支援で高い強度を実現、新旧の技術で製品化となった。9月に発売予定。

 採用されたのは、世界に展開している「プレザージュ」のプレステージライン(上級シリーズ)。これまでに漆や七宝、ほうろうなど伝統技術を取り入れた腕時計を商品化している。有田焼ダイヤルモデルは、江戸時代の有田焼にも用いられた柞灰釉(いすばいゆう)の淡く青みがかった色味を再現した。文字盤上面はカーブがかかり、磁器ならではの質感や立体感が味わえる。

 しん窯は2013年にも別の会社の文字盤を手掛けているが、その際は円形にカットして制作。今回は型を使った圧力鋳込みによる成型のため、真円に近づける高い技術が求められた。「数十ミクロン単位での精度が必要だった」(梶原社長)という。

 文字盤は薄いため、割れないような強度が必要で、磁器製は少ないという。しん窯は、県窯業技術センターが特許を出願している高強度の強化磁器製造の技術支援を受け、課題をクリアした。

 文字盤の数字は、有田焼の染付に代表される青色を主に施した。有田焼モデルは、シンプルなカレンダー付き(18万円、税抜き)と、サブダイヤルがある多針モデル(20万円、同)の2種類。セイコーウオッチによると、3月下旬にスイスのバーゼルで開かれた世界最大級の腕時計見本市でも好評だったという。

 しん窯の制作チームを率いた伊万里・有田焼伝統工芸士の橋口博之専務は「壁はたくさんあったが、クリアしたいという職人魂で取り組んだ。しん窯の理念でもある後世に残るものづくりができたのでは」と手応えを語る。

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