1995(平成7)年に「ウィンドウズ95」の発売が始まり、インターネットのブームに火が付いた。ただ、当時のサービスはホームページや掲示板くらいで、97年のネット利用者は1155万人。それがブログや会員制交流サイト(SNS)の登場、さらにスマートフォンの普及に後押しされ、2013年には1億人を突破した。

 11年の東日本大震災で、フェイスブック(FB)やツイッターが安否確認と情報発信に活用されたのはよく知られている。その半面、個人情報や利用履歴の漏えい、広告を無差別に送りつける迷惑メール、児童ポルノなどが社会問題化。その都度、法改正などで規制強化が進められた。

 平成の時代にすさまじい勢いで膨張したネットワークには国内外から絶えず膨大な有害情報や違法コンテンツが流れ込んでくる。

 だが、それを無理やり取り除こうとすれば、憲法が保障する「表現の自由」や「通信の秘密」との間に緊張関係が生まれる。政府は最近、海賊版の規制に前のめりになり、つまずいた。規制を巡っては丁寧に議論と説明を重ね、幅広い理解を得る努力が求められる。

 今年、衝撃的な画像が世界を駆け巡った。ニュージーランドで3月に起きた銃乱射事件で、50人殺害の罪に問われたオーストラリア人の男は頭部に装着したカメラで乱射の模様を撮影し、SNSのFBを通じて生中継した。動画はさらにユーチューブなどで拡散した。

 6月に大阪市で開催される20カ国・地域(G20)首脳会合で議長国を務める日本に、オーストラリアはSNSの規制強化を議題にするよう求める一方、4月初め連邦議会がテロなどの犯罪動画を迅速に削除しないソーシャルメディア企業の幹部に最長3年の禁錮刑を科す法案を可決した。年間売上高の10%という罰金刑も規定されている。

 この事件を受けて英国も、ネット上から有害情報を排除する規制案を公表した。日本政府は慎重に構えている。国内では、かつて児童ポルノの氾濫が深刻だった。政府は10年に「児童ポルノ排除総合対策」を決定。11年4月から、ネット上にある問題の画像やサイトへのアクセスを通信事業者が強制的に遮断する「ブロッキング」が始まった。

 事業者側は利用者の通信をチェックし、特定のアクセスを遮る。通信の秘密を侵害する恐れがあると懸念されたが、政府は画像がネットで拡散すると重大な人格権侵害が生じると説明。ほかに被害回避の手段がない場合に、例外的に違法性が否定される刑法の「緊急避難」に当たるとした。

 同じ論法で政府は昨年、海賊版の規制に乗り出そうとした。ネット上で漫画などを無料で読ませる海賊版による著作権侵害の被害が拡大しているとして4月、悪質なサイトについて事業者に自主的な接続遮断を促す緊急避難措置を決定した。しかし「児童ポルノと同列に論じられない」「通信の秘密を侵す」と猛烈な批判にさらされ、当初予定していた法制化も含め断念に追い込まれた。

 その後、ネット上の全著作物につき海賊版と知りながらダウンロードする行為を違法とする著作権法改正案をまとめたが、やはり批判の中で国会提出を諦めた。規制は必要でも、ネットの自由とバランスを取ることを忘れてはならない。

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