東日本大震災の被災地を地盤とする自民党衆院議員のパーティーで議員を「復興以上に大事」と発言した桜田義孝五輪相が安倍晋三首相から事実上、更迭された。

 安倍内閣が最重要課題と位置づける被災地の復興を軽視する発言で、閣僚辞任は当然だろう。

 道路整備を巡って、学校法人「森友学園」問題などで焦点となった「忖度(そんたく)」に言及、更迭された塚田一郎元国土交通副大臣の件に続く失態。1強状態が続く安倍政権のおごり、緩みの表れと言わざるを得ない。安倍首相の任命責任が厳しく問われなければならない。

 桜田氏は10日夜、東京都内での高橋比奈子衆院議員=比例東北=のパーティーであいさつし「復興以上に大事なのは高橋さんだ」と述べた。その後、安倍首相に辞表を提出し、受理された。

 辞表提出後、桜田氏は記者団に発言を撤回するとともに「被災者の気持ちを傷つけるような発言をして申し訳ない」と陳謝した。安倍首相も官邸で記者団に「被災地の皆さんに深くおわび申し上げたい。任命責任は首相たる私にある。今後も東北の復興に全力を傾ける」などと語った。

 発言から更迭まで2時間というスピード対応だったのは21日投開票の衆院大阪12区、沖縄3区両補欠選挙や統一地方選後半戦、さらには夏の参院選への悪影響を最小限に食い止めたいという安倍首相側の意向が働いたとみられる。

 しかし、これで一区切りつけさせてはならない。発言、さらには「被災者の気持ちを傷つけた」ことを辞任の理由にした陳謝の言葉に桜田氏の被災地復興に対する認識の軽さがにじむからだ。

 最大震度7を観測した東日本大震災では揺れだけでなく青森、岩手、宮城、福島各県を中心に大津波が襲い、甚大な被害が出た。東京電力福島第1原発では原子炉6基のうち1~5号機で全交流電源を喪失、1~3号機で炉心溶融(メルトダウン)が起きた。さらに1、3、4号機の原子炉建屋が水素爆発し、大量の放射性物質が大気中に放出された。

 国は福島県内の11市町村にまたがる区域に避難指示を出した。除染や生活インフラの整備が進み、2014年以降、順次解除されたが、依然として多くの区域で避難指示が続き、2月末時点で約4万1千人が県内外で避難生活を送っている。

 国民の命と財産、そして領土、領海、領空を守ることが国家の最大の使命とされる。安倍首相はじめ保守系の国会議員が使うフレーズでもある。その言葉通りであれば、守るべき対象が危険にさらされた福島県の状況に深く思いを致し、一刻も早い解決に努力し続けることが国会議員の役割であるはずだ。しかし、桜田氏の発言、陳謝からはそんな認識がうかがえない。

 17年4月にも当時の復興相だった今村雅弘氏が大震災について「まだ東北で良かった」と発言、辞任しているが、被災地に対する思い入れが感じられない。

 桜田氏の直前に辞任した塚田氏も重大な問題に対する認識の甘さが目立つ。安倍首相らへの忖度の有無は、学校法人「森友学園」問題などで焦点となった。道路整備に関する話でその言葉を持ち出すのは事態の深刻さを分かっていない証左だ。失言の背景に自民党の劣化がある。(共同通信・柿崎明二)

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