模擬選挙の候補者について、意見を出し合う生徒たち=佐賀市の致遠館高

 佐賀新聞社による主権者教育の出前授業が3月20日、佐賀市の致遠館高であった。昨年3月末で閉店したJR佐賀駅南口の西友佐賀店跡を含む佐賀駅前の再開発について、教諭3人が「候補者」としてそれぞれ案を語る模擬選挙を実施。生徒たちは自分の考えに近い案を選び、駐輪場の必要性や農業県らしさなど新たな論点も提示した。県都の駅前はどうあるべきか、将来像を探った授業の模様を紹介する。

 

選挙権 使うの選挙だけ?

選挙の仕組みについて講義を聴く生徒たち

 講師を務めた佐賀新聞社の多久島文樹NIE推進デスクは、2月に投開票されわずか10票差で決した鳥栖市長選を紹介し、生徒たちに1票の重さを訴えた。また選挙権の意味についても問いかけ、選挙期間外に有権者ができることを考えてもらった。
 多久島デスクは鳥栖市長選を巡る佐賀新聞の紙面を紹介しながら授業を展開。多くの生徒が知っていた「10票差」という結果のほか、投票率が44・58%と低かったことを紹介した。
 また選挙権について「投票の時しか使わない権利だろうか」と生徒たちに問いかけた。選挙中以外でも意思表示できるパブリックコメント(意見募集)などの制度についても説明した上で「自分たちの地域や県、国のあり方を考えたり、話し合って決めたり、提案したりして実現のために進んでいく権利でもある」と指摘。政治参加の意義やあり方を改めて考えさせた。


まちづくり多様な視点で

 佐賀駅周辺整備をテーマとする模擬選挙で生徒たちは、3人の教諭が「候補者」としてそれぞれプランを語る動画を視聴し、投票先を選んだ。顔なじみの教諭たちがまちづくりを語る様子に笑顔をこぼしつつプランを比較し、選んだ理由も発表。佐賀駅周辺のまちづくりについて、生徒たちのさまざまな視点が浮かびあがった。

 

 佐賀駅前を巡っては、昨年3月末に西友佐賀店が閉店。車を運転できない高齢者を中心とする「買い物難民」の問題も起きた。跡地については、大和ハウス工業が新設する商業施設の核テナントにJAグループが出店する方針となっている。
 佐賀市は、南口、北口の駅前広場と、駅から北へ延びる市道三溝線の3カ所の整備を盛り込む基本計画を有識者会議に示し、承認を得た。南口広場を「佐賀暮らしを象徴する良質な空間」に、北口広場を「目的地への起点となる空間」と位置付け、三溝線は「歩きたくなる仕掛け・デザイン」を取り入れるとしている。

意見発表を迫られ、笑顔を見せる生徒
意見をまとめる生徒

 


 模擬選挙で生徒たちに提示されたのは、(1)先端情報技術複合センターを整備する(2)生鮮食品や日常生活品がそろうスーパーなどを誘致する(3)緑の中で観光客が一息つける空間づくり―の3案。
 (1)は、スマートフォン向けゲーム開発会社Cygames(サイゲームス)が駅東側に建設する自社ビルも合わせて「最先端技術のメッカ」とし、eスポーツの会場やコンベンションセンターも設けることを含む案。
 (2)は、マルシェ形式の商業スペースを想定して、出店しやすいよう通りを整備し、ビルを建てる場合でも1階をマルシェにすることなどを盛り込んだ。
 (3)は、木々の中に小規模な建物を設け、中で佐賀の名所旧跡をICTで紹介したり、県内各地への移動手段の手配をサポートしたりするコーナーも備える内容。
 生徒たちは「僕たちには休息が必要だから(3)」「佐賀駅からは遠くに住んでいるから(2)はあまり関係なく思える」などと個々の事情に照らして投票先を考えた。一方で「買い物難民は現実にある問題で、解決すれば最も県民のためになる」と広い視野で考える生徒や、「スーパーができて駐輪場が整備されれば、迷惑な駐輪も減るのでは」と、示された案を超えて独自に論点を発表する生徒もいた。


感想

意見を発表する生徒

◆2年・武冨祐己さん
 選挙についてはインターネットで調べたりしていて、来年、選挙権を得たら投票に行きたい。佐賀はオスプレイの配備計画があり、安全性の問題はあると思うが、配備によって入ってくるお金もあり、潤えば他の財源に回せるので賛成。配備されることで、佐賀が苦手とする自己アピールにも生かせるのでは。

◆1年・野口紗彩華さん
 どうやって人を選べばいいのか分からなかったが、自分の意見に合う人を選べばいいと分かった。鳥栖市長選の結果は、無効票がそのまま有効になっていたらどうなっていただろう。投票率が40%台というのは低いと思った。もっと行けばいいのに。

◆1年・菰田真衣さん
 新聞は読むので政治に関心が無いわけではないが、選挙へ行こうと思っても公約が難しいし全ての県民がいいと思う政策はなかなかないので、正直「誰でもいいや」と思ってしまう。それでも、選挙には行って自分が大事と思う政策を掲げる人を選びたい。
(学年はいずれも当時)

 

◆その他の生徒の感想(ワークシートから)

話し合った意見を発表する生徒

 ・候補者の政策から「なぜそれを支持するのか」という自分の意見をしっかり考え、友達と共有することができて良かった。
 ・人の意見を聞くことで、考えが変わったり違う考え方も知られて良かった。
 ・自分の意見を持って候補者を選び、他の候補者を支持する人の意見も聞くことで、より自分が何を望んでいるか、何が私たちの生活を良くするかについて考えることができた。
 ・自分のことだけ考えるのではなく、これからの社会について考えることは意外と楽しそうだと思えた。
 ・難しいイメージを持っている政治の話だからこそ、参加型だったことで理解が深まった。社会を変えたいのなら友人同士で政治に文句を言うのではなく、積極的に発言すべきだと思った。その最善の方法が選挙だとよく分かったので、選挙にも関心を持てた。
 ・興味を持っていた佐賀駅周辺整備が争点だったことで、選挙が政治の行く末を決める身近なものだという認識を持てた。市政・県政と私たちは密接に関わっていることを知った。ただ、いまだに国政は遠いところにあるというイメージが取れない。
 ・新聞に候補者の意見が載っているとは知らなかった。政治に対する興味を持つためにも、新聞なども見るようにしていきたい。
 ・自分の支持する候補者別に分かれた時、三つともあまり人数が変わらなかったので、自分の1票はすごく大切なんだと改めて思った。
 ・面白く先生たちを使って選挙のことを丁寧に説明していて、とても分かりやすかった。どの候補者も良い所がたくさんあり、選挙の時は慎重に選ばなければいけないと思った。
 ・今まで、何も知らない自分が投票しても良くないと思っていたが、自分から情報収集をしてしっかり学べば、自分の望む未来に近づけることができると思った。
 ・いろんなことを加味して考えて、自分の希望が通るようなことを言っている候補者を選ぶことが大切だと強く感じた。
 ・選挙への関心は持ったが、選挙に行こうとはあまり思わない。政治家や議員が信用できないから。
 ・有権者ではない私たちでもパブリックコメントで意見を伝えられるのはとてもいいなと思った。

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