統一地方選前半戦で注目された大阪府知事と大阪市長の入れ替わりダブル選は、大阪維新の会が制し、二つのトップの座を守った。府議選でも単独過半数を獲得し、看板政策の都構想の実現へ弾みをつけた格好だ。

 しかし、今回の「民意」は、維新が都構想を一気に進めるお墨付きを与えたとは言い難い。ダブル選の勝利は、劇場型選挙を演出する奇策が奏功した側面が大きいことに加え、市議選では議席を増やしたものの、過半数に届かなかったからだ。

 府政、市政は、議会のできるだけ幅広い勢力と妥協点を見いだしながら進めることが肝心である。住民投票にたどり着くには、勝利におごることなく、合意を取り付ける粘り強く地道な努力が欠かせない。

 ダブル選は、都構想を巡る公明党との協議が行き詰まったことから、松井一郎知事、吉村洋文市長がそろって辞職。4年の任期を確保するため、松井氏が市長選に、吉村氏が知事選に立候補する手段に打って出た。同時に行われる府議、市議選の底上げを狙ったのは明らかで、党利党略と批判されても仕方ない振る舞いでもあった。

 そもそも公選法の規定では、出直し選挙の場合、再選しても残り任期が適用される。自身の都合で選挙時期を決められ、現職首長に有利に働きかねないことから、乱用を防ぐのが目的だろう。ところが、大阪のダブル選は、候補者を入れ替えて新たな任期を得ようとする、法の趣旨に背くような形となり、禍根を残したことを、維新も認識してもらいたい。

 都構想は、大都市地域特別区設置法に基づき大阪市を廃止し、現行の24の行政区を東京23区と同様の特別区に再編するものだ。橋下徹氏が市長時代の2015年5月の大阪市民を対象にした住民投票で、5特別区新設案が否決されている。維新は4特別区案を軸に据え、公明党に協力を求めたものの、賛同を得られず協議は決裂した。

 都構想を実現するには、まず府と市でつくる法定協議会で新制度案を決定し、府、市両議会の承認を得なければならない。その上で、住民投票で過半数の賛成を獲得することが必要となる。このため、維新にとっては、依然として過半数を持たない市議会というハードルが残されている。

 地方自治は、首長、議会議員ともに住民の投票で選ばれる二元代表制をとる。議会は国会と同様に、都道府県や市町村の行政を監視する役割も担っており、その意味で大阪はここまで制度が機能していたとも言える。

 いったん直接民主主義の住民投票で示された「民意」は軽くない。新知事に当選した吉村氏は「都構想の再挑戦に踏み出したい」と強調したが、新市長となった松井氏は「反対の意見も聞きながら丁寧に進めていきたい」と他党との合意形成に努力する考えを示したのは当然だ。

 府政や市政は、都構想に是か非か、だけではない。地盤沈下と言われて久しい経済の再生、社会保障、教育、暮らしに関わる身近な課題が山積する。従来以上に、これら一つ一つを解決して実績を積み上げていくことが、都構想への理解を広げる近道になるのではないか。

 2025年には万博も控える。「分断」から「統合」へ脱皮した大阪を目指してほしい。

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