18歳選挙権について意見を述べる生徒=鳥栖高

 佐賀新聞社は3月19日、鳥栖高(鳥栖市)で主権者教育の出前授業を開き、JR鳥栖駅周辺の開発を「争点」とする模擬選挙を実施した。昨年、基本設計の概要を発表したわずか5日後に白紙撤回された駅周辺整備事業。「駅前は街の顔」「混雑解消に東口は必要」。受講した1、2年生約480人は普段の生活を振り返り、ターミナル駅・鳥栖がどうあるべきか思いを巡らせ、それぞれの意見を発表した。授業の模様を紹介する。


未来左右する1票胸に刻む

新聞を参考に選挙を考えようと講義する多久島NIE推進デスク

 鳥栖市では、2月17日に市長選が投開票されたばかり。2万5000人余りが投票し、勝者と敗者の得票差がわずか10票というまれに見る激戦だった。1票が未来を左右しうることを、生徒たちは改めて深く胸に刻んだ。
 市長選の結果が何票差だったか、多久島文樹NIE推進デスクが生徒たちに聞いたところ、ほとんどの生徒が正解した。一方で多久島デスクは、投票率が50%を切っていたことや、211票あった無効票の取り扱いなどについて落選した候補者が異議を申し立てたことなども説明。「1票が非常に大切になってくる」と強調した。
 鳥栖市長選について伝えた佐賀新聞の報道も紹介した。多久島デスクは候補者の人柄や政策アンケート、若い有権者の意見を紹介する連載記事などを並べ「候補者の考えを知るとともに、自分はどう思うか考えておく必要がある。誰かに投票する前こそが大事」と呼び掛けた。
 4月7日投開票の統一地方選にも触れ、選挙権を得る2年生に向けて投票を呼び掛けた。

 

3案から選択支持の理由発表、熱弁する生徒も

 模擬選挙は3人の教諭を候補者に見立て、鳥栖駅周辺整備計画について3人が語った動画を視聴して実施した。生徒たちは見慣れた教諭が「立候補」する動画を面白がりつつ、政策と自分の考えをすり合わせた。

 


 鳥栖駅の改札口は西側にしかない。駅東側にアクセスするには歩道橋を渡るなど迂回(うかい)が必要で、2月の鳥栖市長選期間中に実施した佐賀新聞社の世論調査でも74・2%が東口開設を希望した。
 生徒たちに提示された案は、(1)鳥栖駅東口を開設し、駅東側は総合公園化する(2)鳥栖駅の既存の地下道を延伸して東口を開設する(3)駅東側は現状維持で西側を整備する―の三つ。
 (1)は、駅前不動産スタジアム一帯をスポーツエリアとして総合公園化する計画も含めた。(2)は、駅周辺整備費用を抑えて他のソフト事業や災害対策などに財源を回す条件も添えた。(3)は、駅前の交差点改修や駅西口からの遊歩道整備を掲げ商店街活性化を目指すとした。

公約について自分の考えを述べる生徒
候補の公約について真剣に話し合う生徒

 


 支持する候補者別に分かれてもらい、それぞれの支持者に理由を尋ねた。(1)の支持者の中には「駅東側に住んでいる」という生徒もいて、「スポーツエリアができれば活性化につながる」などの意見が上がった。

公約を比べて、自分の意見を語る生徒

 (1)と同じく東口を整備する(2)の支持者からは「東口は必要だが、お金は鳥栖市民のために有効に使ってほしい」と総合公園化などの案に疑問を投げかける声が聞かれた。
 (3)の支持者は、駅西側についても交差点の不便さや鳥栖ビル跡地の整備などの課題があることを指摘し、「鳥栖の顔として改善が必要」と訴えた。
 司会を務めた佐賀新聞社のスタッフからマイクを向けられた生徒たちは、積極的に自分の意見を発表した。中には、選んだ候補者を支持する理由だけでなく、他の候補者の案や鳥栖市の財政規模に言及し「そんなことは求めていない」と熱弁を振るう生徒も現れるなど、会場は盛り上がった。


感想

◆松本颯馬さん
 もともと投票には行った方がいいと思ってはいたが、今は行きたいと思う。公園でサッカーがしたくて(1)が良いと思ったけど、もっとにぎやかでいい街にして若者を増やしてほしいから(3)にも引かれた。

◆松本佳乃さん
 普段はあまり新聞を読まないが、投票をするために新聞を読み、候補者の考えを深く知って、未来をより良くしてくれる人を選びたいと思った。(2)は福祉のことも考えていた点で選んだ。

◆安平ゆうさん
 鳥栖には万単位の人がいるのに、票差が10票しかなかった1回の選挙で決まってしまう。日頃から選挙のことを意識しておかないと、いざ機会が与えられた時に何が正しいかなんて分かるのかなと思うが、投票後に後悔しても遅い。選挙の結果、正しかったかどうかも考えなければいけないと思った。

◆浦大智さん
 選挙は難しいイメージだったが模擬選挙をして分かりやすかった。駅前の交差点を改善してほしいと思ったので(3)を選んだ。同じ意見の友達と話し合ったことで意見が深まった。選挙について調べて18歳になったら参加したい。

◆徳永和馬さん
 いろいろな人の立場を配慮した政策だと思ったので(2)を支持した。友達と話し合うアクティブな授業内容だった。普段、選挙に関わることはないと思っていたが、あと2年と考えるといい機会だった。自分で見分ける能力のある大人になりたい。

◆市丸綾由莉さん
 鳥栖駅だけでなく身近にある商店街の発展も考えている(3)を選んだ。父から政治の話をされることもある。自分の投票で変わると知って、情報を集めて自信を持って投票へ行きたいと思った。

◆その他の生徒の感想(ワークシートから)
 ・これまでは選挙についていまいちイメージできなかったが、少し親しみが沸いた。毎回投票することを心掛けたい。
 ・よりよい地域づくりや生活の安心のための取り組みは、みんなが納得したやり方で進めた方がいいので、投票率を上げていかなければならないと思った。
 ・得票数が僅差でも、今後の自分たちの生活ががらりと変わることがあるのだと分かり、責任を持って選挙に関わるべきだと感じた。
 ・自分の考えを持ち、鳥栖のためにも投票に足を運ぼうと思った。「たった一票」ではなく、「10票で変わる」という事実の大きさを実感できた。
 ・候補者の公約にそれぞれどういう思いが込められているかなどを考え、政治に関われることをうれしく感じた。
 ・いままで漠然としていた選挙を身近に感じることができた。また、みんな違った意見を持っているものなんだと分かった。

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