パソコンに向かう前田将孝さん=伊万里市の伊万里高

「炎天下 タイヤの擦れた 車椅子」-。焼けたアスファルトに熱された、タイヤのにおいが鼻によみがえる。伊万里高文芸部2年の前田将孝さん(16)は、流れる汗が染み込んだマラソン競技用の車いすを歌った俳句で、さが総文への出場を決めた。

 昨年10月の県高校文芸コンクールで、審査員は前田さんの作品に「病院にぽつんとたたずむ車いすを思い浮かべた」と述べた。極限まで軽量化した流線型の競技用車いすが頭にあった前田さんは、医療用車いすをイメージされたことに「驚いた。でも嫌じゃない」と笑う。

 前田さんは「作品が作者から読者にわたり、読者がイメージを広げてくれることで作品世界は広がっていく。それは読者がいる面白さ」と笑顔を見せる。高校から文芸部に入部し、作品を通して読者と交流する楽しみに出合った。

 自分が人からどう思われているかが気になって、人に話しかけるのをためらってしまう。「だから独り言が多いんです」と前田さんは言う。「いつか誰かに話しかける時のために、言いたいことを整理しているのかも」とはにかむ。

 振り返れば特にきっかけもなく、中学生の頃から人に話しかけるのが難しくなった。前田さんは「僕は思春期を迎えたんだろう」と話し、俳句にも思春期の複雑な思いを投影する。

 想像ではなく自分の身の回りにある本当のことを詠むことで、作品がいきいきと動き出すことを文芸部で学んだ。脳性まひで幼少の頃から車いすが身近にあり、車いすマラソンの出場経験もある。前田さんにとって、一席を取った作品も「身の回りにある本当のこと」のひとつだった。

 自らが変化していく思春期の驚きや戸惑いも、自分の実感として俳句に込めたい。独り言のように自分と向き合い詠んだ俳句は誰かに届き、いきいきと前田さんの世界を広げていく。

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 7月27日から8月1日までの6日間、高校文化部の祭典「第43回全国高校総合文化祭」(2019さが総文)が県内各地で開かれる。全23部門に出場する代表生徒を1部門1人ずつ取り上げ、部活動やさが総文に向けた思いを紹介する。(随時掲載)


メモ 文芸部門は7月27日から31日まで、伊万里市民会館と伊万里市民センターを拠点に開かれる。文芸部誌、散文、詩、短歌、俳句の5部門の都道府県代表約200人が佐賀に集う。

 県内の名所を巡り短歌や俳句を詠む「文芸散歩」や作品展示、直木賞作家・原〓(僚のツクリ)さん(鳥栖市)の記念講演などが予定されている。文芸散歩は唐津城や名護屋城跡、佐賀城本丸跡周辺や吉野ヶ里遺跡など。

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