「ネズミの楽園」と呼ばれる実験がある。ネズミを二つのグループに分け、一つのグループは金網の檻(おり)に1匹ずつ隔離して食事は決まった時間に与える。もう一方は、快適な環境で十分な餌を与えられ、他のネズミとも交流できる。まさに楽園だ◆この二つのグループに普通の水とモルヒネを混ぜた水を用意して観察した。すると、1匹ずつ隔離されたネズミの多くは孤独な檻の中でモルヒネ水を摂取しては酩酊(めいてい)していたのに対し、楽園のネズミは他のネズミと遊んだりしてモルヒネ水を飲もうとしなかったという◆カナダの大学の心理学者が実施した。実験ではモルヒネに依存したネズミを楽園に移すと他のネズミと仲良くなり、普通の水を飲むようになった。この結果から、孤独な状況や閉(へい)塞(そく)感、自分の裁量が利かない状態だと人は依存症になりやすいのではないかと考えられるという◆コカインを使ったとして逮捕、起訴された俳優でミュージシャンのピエール瀧被告が先日、保釈された。「ストレス解消に使った」と供述したと伝えられているが、これから世間の強い非難と排除の空気に耐えていかなければならない◆いまある状況が「苦痛な檻」か「楽園」か。苦しいと感じる人ほど依存症になりやすく、薬で軽くしようとするという。孤立を防ぎ、心を和らげる支援に目を向けたい。

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