これで幕引きにしてはならない。

 塚田一郎国土交通副大臣が、道路整備を巡って「安倍晋三首相や麻生太郎副総理(兼財務相)が言えないので、私が忖度(そんたく)した」と発言した問題で辞任した。安倍首相は当初、続投させる構えだったが、統一地方選や衆院補欠選挙への影響を抑えるため方針転換したとみられる。

 発言は国交省の首脳が所管する行政を私物化した上、選挙向けにそれを誇るような内容で、副大臣辞任だけでは済まされない。学校法人「森友学園」を巡る一連の問題で焦点となった忖度という言葉を使う軽薄さも尋常ではない。

 1強状態が長期にわたる安倍政権のおごりと緩みを象徴する言動でもある。

 塚田氏は参院議員も辞職するとともに政府、国会双方で忖度など行政をゆがめる行為がなかったのか事実関係を明らかにする必要がある。

 塚田氏の発言は1日、北九州市で開かれた福岡県知事選の応援集会で飛び出した。

 副大臣室を訪れた吉田博美・自民参院幹事長から、安倍首相の地元の山口県下関市と、麻生氏の地元の福岡県を結ぶ「下関北九州道路」の国直轄調査について「これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ」「俺が何で来たか分かるか」と言われたと紹介。「私は忖度しました」と断言した。

 下関北九州道路は、関門海峡を挟んだ下関市と北九州市を結ぶ「第3の関門道」として地元自治体や経済関係者などが長らく整備を求めている。財政難などを理由に2008年に凍結されたが、19年度から国の直轄調査が決まった。塚田氏は「今回の新年度の予算で国直轄の調査計画に引き上げました」とも強調していた。

 事実であれば、首相らに対する配慮で行政をねじ曲げたことになる。報道を受け、塚田氏は翌日、文書で事実と異なる発言だったとして撤回、謝罪。3日には衆院厚生労働委員会などで「大勢が集まる会だったので、われを忘れて誤った発言をした」「忖度したことはないし、首相、副総理の地元だから特別な配慮をしたことはない」と釈明した。

 安倍首相も「有権者の前で事実と異なることを述べたのは重大な問題だ」と事実関係を否定する塚田氏の説明を追認。罷免要求に対しては「本人がしっかり説明し、このことを肝に銘じ職責を果たしてほしい」と否定していた。

 しかし、塚田氏の発言は極めて具体的で「われを忘れたことによる誤った発言」とはとても思えない。政府、国会は今後、関係者から事情を聴くなど調査を行うべきだ。

 仮に塚田氏の主張通り事実ではなかったとしても、発言は7日投開票の福岡県知事選の自民党推薦候補を応援する集会でなされている。さらに国の直轄調査は、選挙の対抗馬である「(現職)知事に頼まれたからではありません」とも述べているという。権限乱用による利益誘導で選挙戦を有利にしようとしたと見るのが自然だ。

 塚田氏があくまでも議員を辞職しないのであれば自民党が促す必要がある。昨年10月の内閣改造で「適材適所」として塚田氏を国交副大臣に任命した安倍首相が率先しなければならないことは言うまでもない。(共同通信・柿崎明二)

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