真新しいスーツの若者と少しおなかの出たオジサンが並んで歩く姿をJR佐賀駅近くで見かけた。ちょうど昼飯時、先輩社員がなじみの定食屋に誘ったのだろう。2人のちょっぴり緊張した表情が初々しかった◆そんな気持ちをほぐそうと週末は花見を計画している会社もあろう。「花冷え」が続きタイミングが難しかったが、ようやく陽気が戻ってきた。舞い散る花びらを眺めながら先輩の苦労話を聞くのも新入社員の最初の仕事だ◆奈良時代が起源とされる花見。欠かせないのが日本酒だろう。その日本酒は温度によって多くの呼び名があるそうだ。5度前後の「雪冷え」に始まって「花冷え」「涼(すず)冷え」。そして「日向燗(ひなたかん)」「人肌燗」「ぬる燗」「上燗」「熱燗」。一番高い温度が55度前後の「飛切(とびきり)燗」。日本人の細やかな感覚が反映されている◆作家の立原正秋は瓢箪(ひょうたん)に酒を入れて腰に下げ、家の近くの山桜を眺めに行く―と随筆に書いている。「一人花見」の風情か。が、勤め人はそうもいくまい。日本酒の細かな区分けほどはいかなくても、周囲への気配り目配りがいる◆最近は新人に花見の場所取りを頼むとパワハラと受け取られかねないという。これから長い付き合いになる。宴の終わる頃、先輩後輩ひとつの気持ちになれたらいい。〈花の幕たたむ二人も酔ひしれて〉清原枴童(かいどう)。(丸)

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