三養基郡上峰町は、2月末に閉店した大型商業施設「イオン上峰店」跡地の大規模再開発を、民間資金を活用して社会資本を整備するPFI事業で進めようとしている。公共事業のあり方に一石を投じる先駆的な取り組みで、今後の展開から目が離せない。

 PFIはプライベート・ファイナンス・イニシアチブの略で、公共事業に民間の経営ノウハウを活用する取り組みを指す。日本では1999年に導入され、福祉施設、学校や図書館などの文教施設、温泉などの観光施設、官公庁に至るまで適用分野は多岐にわたる。

 県内では上峰町の隣のみやき町などが定住・移住を促進する対策の一つとして、町営住宅の建設・維持管理に採用している。

 上峰町の取り組みで注目すべきはその規模の大きさにある。今後、自治体は財政が厳しくなる一方で、老朽化したインフラの補修・維持や人口減少に伴うコンパクトシティーづくりなどに多大なコストがかかると見込まれている。今回の取り組みが成功すれば、PFIがそれらをこなしていく一つの先行例となる可能性もある。

 計画では「イオン上峰店」の運営会社イオン九州(福岡市)から跡地と建物を現状のまま無償で譲渡を受け、周辺の民有地を含めた約6・5ヘクタールに大型商業施設、公共施設、遺跡や歴史を生かした施設、町営住宅などを再整備する。

 開発手法は、民間企業が自ら資金を調達して計画をつくり、施工し、テナントの交渉、完成後の運営管理までを一括して受注するPFI方式。20年間の委託契約とし、町は公共施設部分を買い取る。イオンは無償譲渡と引き替えに、新施設への出店を希望している。

 武広勇平町長らがこうした着想を得たのは2016年12月、岩手県紫波しわ町を視察したのがきっかけだ。駅前の土地約11ヘクタールを取得したものの開発予算が確保できずにいた同町は、町の財政負担を最小限にしながら、図書館、役場庁舎、保育園、体育館、ホテル、分譲住宅などをPFIなどの公民連携手法で整備していた。武広町長は「本当に驚いた。民間が資金を出したというのが目からうろこだった」と振り返る。

 上峰町は現在、PFI事業に応募してきた民間業者と協議を進めており、5月のプレゼンテーションを経て事業者を選定、9月ごろに契約し、最速で2年後の2021年夏には完成させたい考えだ。

 当然、PFIにはメリット、デメリットが指摘されている。町側から見れば、これまで担ってきた事業に関わるリスクを民間に移すことで負担を軽減でき、財政支出の削減効果が期待できる。一方で、民間事業者にとっては運営によって利益を出すことが前提なので、町が希望する施設や事業が盛り込まれない可能性もある。

 民間事業者側から見れば、新たな投資機会を獲得することができ、長期的に安定した収入が見込め、企業としての信頼性が高まる効果もある。ただ準備が大変な上、実績を求められることも多く、参入の障壁が高いのが現状という。

 ぜひ成功させて、県内でも駅前や既存市街地の再開発などに利用が広がる先駆けになってほしい。公共事業のスピードアップ、需要開拓にもなる。人口が1万人に満たない小さな町の大きなチャレンジに注目したい。(高井誠)

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