総額2兆円に上る消費税増税対策を盛り込んだ2019年度予算が3月27日に成立、10月の税率引き上げまで残り半年となった。対策の制度設計やレジ・経理システムの更新など官民で準備が本格化してきた。

 一方で景気は、米中貿易摩擦や中国経済の不調を背景に減速感が出てきた。月例経済報告や日銀の企業短期経済観測調査(短観)では、輸出不振が鮮明になっている。

 自動車輸出の数量規制や意図的な通貨安誘導を禁じる為替条項を念頭に置く米国との貿易協議も近く始まる。

 こうした中で統一地方選が始まり、7月には参院選が控えている。「選挙モード」に入った永田町は景気に敏感になってきた。安倍晋三首相は過去2回、消費税増税を延期しており、政財界には3回目の延期観測もあるようだが、日本経済を根底から揺るがすような事態が起こらない限り、増税は予定通り実施しなければならない。

 16年の増税延期は、条件としていた「リーマン・ショック級や大震災級の事態」は発生していなかったが、首相は「増税は内需を腰折れさせかねない」との「新しい判断」を示して税率引き上げを先送りし、国民の信を問うとした参院選で勝利した。

 本当に世界的な経済の大混乱が起きれば、増税を延期する緊急避難が必要になるかもしれない。しかし、景気の現状を見ると、外需不調による輸出の減退はあるが、個人消費や設備投資は堅調で、深刻な腰折れ懸念があるわけではない。

 今回の税率引き上げに際し、政府は、自動車や住宅関連の減税に加え、飲食料品などに軽減税率を導入、このほかにも、キャッシュレス決済でのポイント還元やプレミアム付き商品券の対策を実施する。消費不振が長引いた14年の引き上げの二の舞いを避けるためだ。

 目玉施策とされるのはポイント還元だ。クレジットカードやQRコードなど現金を使わずに中小の店舗で決済すると、代金の5%がポイントとして還元されるというのが制度の骨格だ。しかし対象の「中小事業者」と、対象にならない大企業の線引きが難航している。

 政府は、資本金や従業員数などで中小企業法の定義を満たす企業や個人を基本としているが、家電量販店などは資本金基準でいうと中小の分類になり、公平性の問題が指摘されている。

 還元分として付与されたポイントの経費は政府が決済事業者に補助するが、消費者が最終的に使わなかったポイント分はそのまま、事業者の手元に残ってしまう。

 付け焼き刃で打ち出した施策の欠陥が露呈した格好だ。改善策は財務省を中心に検討されているが、いずれも制度の根幹に関わる問題だ。利便性が高く実効性のある制度に仕上げなければならない。

 そもそも、この施策は、高齢者や子どもなどキャッシュレス決済の手段を持たない消費者には向き合っていない。政策目的と行政の公平性の関係は、論点を整理して考え直す必要がある。

 ポイント還元には、増税による消費落ち込み防止、キャッシュレス決済の普及、中小企業支援という三つの目的があるが、少々詰め込みすぎたのではないか。政策資源が別々の方向に拡散すれば、効果が薄れるのは自明の理だ。

(共同通信・高山一郎)

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