明治25年の出来事を丹念に拾い上げた尾形善次郎さん。「今にも通じる歴史がある」と話す=多久市役所

著書「近代国家の誕生と試練」。佐賀新聞の記事を基に、郷土の近代史を掘り起こした

 多久市郷土研究会会長の尾形善次郎さん(85)が、佐賀新聞の記事を基に明治期の県内の動きを丹念に掘り起こし、著書『近代国家の誕生と試練』にまとめた。明治25(1892)年の出来事を三つのテーマで著述。新聞の役割を「社会を映す鏡」と評し、具体的に歴史を捉える教材にしてもらおうと、多久市の学校や図書館に寄贈した。

 三つのテーマは、政治結社「自明社」の動きを追った「自由民権運動の先駆」▽第2回衆院総選挙での民党(反政府派の立憲自由党や立憲改進党)への選挙干渉に焦点を当てた「民党・官党の争い」▽日露戦争の戦況を追い、日本の新たな課題を探った「先進国に伍ごし新時代へ」。ここから世の中の動きを読み解いた。

 全149ページのうち、「民党・官党の争い」に約100ページを割いた。当時、政府への抵抗が根強かった佐賀は官憲による選挙への干渉が特に激しく、各地で騒乱が続発。多くの死傷者が出て軍隊が出動し、杵島・藤津郡では投票が延期になった。尾形さんは「恐怖を覚えて騒乱を見ていたという祖母の話が新聞で裏付けられた。明治の新聞は臨場感にあふれ、まるで自分がそこにいるかのような錯覚に陥った」と振り返る。

 尾形さんは佐賀近代史研究会会員。同研究会は明治17(1884)年の創刊以来の佐賀新聞を調べ、郷土の近代史を発掘、これまでに6冊の『佐賀近代史年表』を刊行している。尾形さんは当初から編集に携わり、明治25年を担当していた。自著にはこれまで佐賀新聞に連載した記事や研究報告、関連する写真や絵も収録している。

 尾形さんは「新聞の保存紙に触れ、学習した記録は、明治の佐賀や日本、世界との出合いにもつながっていた」とも記す。さらに現代にも通じる激動の時代「明治」へのさらなる探究の姿勢を巻末につづっている。

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