万葉集にはたくさんの花や木が題材に使われている。中でも「梅」「萩」「橘」はよく出てくるが、「桜」はそれらと比べると少ないそうだ。桜の代表ともいえるソメイヨシノが江戸末期から明治初期になって普及したからだろう◆満開を迎えた桜。最近、この花びらが淡いピンクではなく、白っぽく見えることが多くなった。年齢のせいか気になって調べてみると、ソメイヨシノは咲き始めは淡紅色、満開になると白色に近づくとあった。気候によっても変わるらしい。どうやら白く見えたのは年のせいではなかったようだ◆ただ、人にはイメージとして記憶している「記憶の色」というものがあるという。子どもの頃の入学式の晴れやかな桜の記憶が実際よりも鮮やかな色の花びらとして心に刻まれていたのかもしれない◆〈清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢ふ人みなうつくしき〉。与謝野晶子は桜の歌を多く残した。情熱的な歌人のイメージがある晶子だが、その記憶にあったのは夜桜を楽しむ人々の穏やかな表情だった◆新しい元号が決まり、テレビで新聞の号外に人が殺到する映像を見ていて、新時代への高揚感が伝わってきた。春の和らぎを感じさせる新元号「令和(れいわ)」。これから人々の心にどんな記憶が刻まれていくのだろう。願わくば、心安らかに彩られる時代であってほしい。(丸)

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