政府は5月1日の新天皇即位に伴う新元号を「令和(れいわ)」と決定した。皇位継承前の新元号公表は憲政史上初めて。安倍晋三首相は公表後の記者会見で「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つ」という意味を強調した。新しい時代が平和であり、改元で心機一転、国民が融和し、社会全体に新たな力が湧いてくるように期待したい。

 だが、元号は国民が共有する「時代の名前」なのに、選定は「平成」と同様に政府によって完全な密室で行われた。将来は国民に開かれた選定方法に改めるべきだ。

 中央省庁や自治体、企業は今後1カ月、改元に伴ってコンピューターシステムの不具合が起きないよう対応に全力を挙げる。公表時期も国民本位で考えるなら、もっと早められたのではないか。

 「令和」の出典は日本最古の歌集「万葉集」で、中国でなく日本古典からの採用は確認できる限り初めて。元号は古代中国から伝わったが、日本の文化を重んじ、選択の幅を広げたことは評価できる。ただ、決して反中国や国粋主義に基づくものであってはならない。

 「令和」は「初春の令月にして、気淑きよく風和やわらぎ…」の中の2文字を取った造語で「良い和」という意味になる。安倍首相は会見で「万葉集には天皇から防人さきもりや農民まで幅広い階層の人々の歌が収められている」「日本の文化と伝統を象徴する国書」と述べた。自ら憲法改正で明記を目指す自衛隊を想起させる「防人」にあえて言及したのは違和感があった。

 元号は「国民の精神的な一体感を支える」とも主張したが、時代にそぐわない。「大正ロマン」「昭和歌謡」「平成不況」など時代のくくりにはよく使われるが、近年、日常生活の中で、元号を使用する国民や企業は明らかに減っている。

 「一世一元」(天皇1代につき1元号)とされ、天皇の贈り名(追号)にもなる元号は、天皇制の在り方と深く関わる。その選択や使用については、国民の意見を尊重すべきであり、元号の使用強制をしてはならない。

 元号は敗戦後の旧皇室典範の廃止で、法的根拠がなくなったが、保守派の働き掛けで、1979年に成立した元号法で再び法的裏付けを得た。

 同法成立を受けて決まった「元号選定手続き」に基づき、政府は3月14日、専門家に候補名選びを正式に委嘱、公表当日、複数の原案について、有識者懇談会、衆参両院正副議長の意見を聴取し、閣議で決定。天皇が政令に署名、公布した。

 候補名を選定した国文学、漢文学など4分野の専門家の名前は公表されない。2016年8月、天皇陛下が退位の意向を表明して以来、2年以上の準備期間があった。いつからどのように新元号選びを進めたのか不明だ。有識者懇談会はわずか40分で、国民からの意見聴取をアピールする形式だけのようだ。

 安倍首相は2月22日と3月29日、皇太子さまに面会した。新元号の選定状況を報告した可能性がある。憲法4条は「天皇は国政に関する権能を有しない」としており、新元号案への意見を聞くことはできない。首相は憲法違反はなかったことを明確にすべきだ。

 公表時期について、当初は政府内でも「18年夏」が有力だった。事前公表に反対する保守派の圧力で、1カ月前まで先送りされたのは残念だ。(共同通信・森保裕)

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