発達障害の原因として、遺伝子異常、染色体異常、体内環境の異常、周産期の異常、生まれた後の病気や環境(児童虐待)などが指摘されていますが、実証にはいたっていません。その一方で、最近、農薬との関係が注目されています。1990年頃から急速に広がったネオニコチノイド系農薬が子どもの脳の発達に悪影響を及ぼす見解が世界で報告されています。

 この農薬は、農業に使用されるだけでなく、松枯れの防止薬、家庭用の殺虫剤、シロアリの駆除剤、さらには住宅建材の中にも使用されています。学術誌に発表された論文によると、国内での12~13年のサンプル調査で、3歳時(233人)の尿中に有機リン系の代謝物が100%、ネオニコチノイド系農薬の代謝物が79.8%の割合で検出されました。

 子どもへの影響をはじめ、さまざまな環境問題につながるとして、EUは昨年、ネオニコチノイド系3種類の農薬の屋外使用を禁止。オランダは2014年に、フランスが16年、韓国も14年、ブラジルは15年、台湾は16年に、それぞれ使用を禁止しています。ところが、日本は禁止どころか、ここ数年はネオニコチノイド系農薬の食品の残留基準をむしろ緩和していると聞きます。イチゴの日本の残留基準(アセタミプリド)は3ppmで、これはEUの60倍、米国の5倍の緩い基準です。ブドウの5ppmはEUの10倍、米国の14倍。トマトの2ppmがEUの4倍、米国の10倍。お茶の30ppmは、なんとEUの600倍の基準になるとのこと(青沼陽一郎のレポートより)。

 日本弁護士連合会は「ネオニコチノイド系農薬の使用禁止に関する意見書」を17年12月に公表。「子どもの発達への影響が懸念されるにもかかわらず、日本ではいまだ予防的措置がとられていない」と指摘し、法の改正を求めています。

 脳の発達に影響を与えている要因が農薬だけにあるとは断定できませんが、子どもの脳との関係が指摘されていることは確かで、小中高大生に発達障害の心理相談が年々増加していることも事実です。使用禁止が世界の潮流になる中、それに逆行するような日本の姿は見直すべきではないでしょうか。虫食いのない完璧な野菜を買う日本文化も背景にあるのかもしれません。(佐賀大学保健管理センター、精神保健指定医 佐藤武)

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