この欄で健筆を振るう(賢)さんは、新聞の見出しをつけレイアウトをする編集部門の大先輩でもあった。記者が書いた記事に的確な見出しを考え、興味を引くレイアウトをするには、それなりの技術がいる◆ある時、死亡記事について話をした。死亡記事は扱いの大小、社会面での紹介の仕方など新聞社の「見識」が最も問われると昔から言われてきた。いわば新聞社の力量を問うバロメーターと言っていい。以下は(賢)さんと、私(丸)のやりとり◆「長谷川一夫っていう俳優がおったやんね」「ああ、あの男前の人ですね」。「彼が亡くなった時のことばってん」「はい」。1面は「〈長谷川一夫さん死去〉でいくやろう」「はい」。「社会面の見出しは何てつける?」「えーっと。やっぱ〈永遠の二枚目逝く〉とかですかね」◆「普通はそがん考える」「はい」。「ところがさい。よその新聞の見出しを見た時に、やられたと思ったのがあった」「なんですか。どんな見出しで?」…(賢)と(丸)しばし沈黙◆「〈おのおのがた、さらば〉って」「おーっ。長谷川さんの当たり役、忠臣蔵の大石内蔵助ですね」。「すごかやろ」「すごかー」。時代劇スターの名ぜりふから取った見事な見出しで盛り上がる先輩と後輩。〈おのおのがた、さらば〉―。別れ、そして旅立ちの季節である。(丸)

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