日産自動車の「ガバナンス(統治)改善特別委員会」が、最終報告をまとめ、統治機能の立て直しに向け社外取締役の積極的な活用を柱とする改革を進めるよう求めた。

 カルロス・ゴーン前会長への権限集中が不正の温床となったことを考えれば、権限を分散させ、社外取締役が独立した立場から、事業進展やコンプライアンス(法令順守)などの状況を客観的に評価する仕組みは、一定の効果が期待できよう。

 前会長の逮捕で明るみに出た統治不全の克服と、フランス自動車大手ルノーとの提携再建、三菱自動車も加わる3社連合の刷新に向け、土台となる提言と言える。日産は報告の趣旨を十分踏まえ、新たな体制を構築しなければならない。

 特別委の報告で改革の方向は定まった。今後は社外取締役の人選など具体的な肉付けがテーマになる。能力、見識、経験などから適切な人物を選び、適材適所の布陣を整えたい。

 前会長の不正を見抜けなかった西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)らが経営の中枢を担い続けることの妥当性については議論があるところだろう。

 突然、リーダーを失った巨大組織を運営するには、継続性が重要なことは認める。しかし、側近として前会長に仕えながら、報酬の過少申告や会社資金の私的使用などを許してしまった西川氏らの責任は否定できない。特別委はこの点を不問にしているが、西川氏らには、株主や市場、取引先などに対する説明責任があることを指摘しておきたい。

 特別委が示した改革の基本的な考え方は、業務執行と監督の分離だ。それを実現するための措置として、社長兼CEOに執行を、取締役会議長に経営監督を担わせる仕組みを打ち出した。前会長が持っていた権限を二分し、別々の人間に担わせる形だ。さらに取締役会議長には社外取締役を充てるという。

 これに合わせ会長職を廃止する。主導権争いに絡み、日産、ルノー間で対立の種となっていた会長職はポストそのものがなくなる。

 前会長が権力を掌握した最大の力の源泉は役員人事や報酬についての決定権だった。経営上の観点より前会長の意向が大きく影響し、経営が迷走する原因となった。

 こうした事態の再発を防止するため、統治形態を会社法で定めた「指名委員会等設置会社」に改める。役員人事や報酬などを、社外取締役が過半数を占める3委員会が決める仕組みだ。複数が関わることで判断に客観性が担保され、恣意(しい)性を排除することができる。

 日産とルノーの関係は、世界で最も成功した自動車大手の提携と称賛されたこともあったが、前会長逮捕後は、提携についての考え方の違いが表面化。日本、フランス政府も巻き込んだ混乱は、日仏連合の脆弱(ぜいじゃく)さを露呈し、業績悪化にもつながった。

 この間、トヨタ自動車などは人工知能(AI)対策強化などを相次いで打ち出したが、三菱自動車も含めた3社連合は、ほころんだ内部統治の修復に追われ、前向きの経営戦略に十分に取り組めなかった。自動車産業が大きく変革する時代に、貴重な時間を浪費してしまった影響は大きい。巻き返しを急ぎたいが、まずは足元を固めることが先決だろう。(共同通信・高山一郎)

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