骨や筋肉など運動器の障害で移動機能が低下する「ロコモティブシンドローム(=ロコモ、運動器症候群)」は、メタボリックシンドロームや認知症と並んで、介護状態になる三大原因の一つに数えられています。ロコモの原因の一つに挙げられる骨粗しょう症や、ロコモにならないためのポイントについて、ひらまつ病院の整形外科医・田中里紀さんに聞きました。

運動器の衰え自覚し早めのロコモ予防を
女性は40歳機に骨密度検査を

要介護の原因4分の1はロコモ

 介護が必要な状態になった原因を見てみると、筋肉や骨、関節などが衰えて、立つ、歩くといった力が低下する「ロコモ」に起因するものが24・6%を占め、認知症や脳血管疾患を上回っています。筋肉や骨は適度に体を動かすことで維持されるので、普段から体を動かすことを心掛けてください。
 ロコモは知らず知らずのうちに進んでいきます。日常生活に支障をきたす程度まで運動機能が落ちてしまうと、回復はなかなか困難。だからこそ、運動器の衰えを早めに自覚し、予防に努めることが大切です。

 自分がロコモであるかどうかを簡単に察知する方法として、「ロコモチェック表」と「ロコモ度テスト」があります。ロコモチェックでは、「片足立ちで靴下がはけない」「階段を上るのに手すりが必要」などの7項目のうち1個でも該当すればロコモの可能性があるとされています。ロコモ度テストは、高さが10、20、30、40㌢と異なるいすから片脚か両脚で立ち上がれるかを見る下肢筋力試験。「立ち上がりテスト」「2ステップテスト」「ロコモ25」の3つのテストで構成されています。
 それぞれ各年代の平均値と比べ、年齢相応の移動能力があるかを判定できます。ロコモに該当する人の中で膝などに痛みがある、片足で立てないほど筋肉が弱っている人は治療を優先して、整形外科の医師や理学療法士の指導の下でロコモ予防のトレーニング(ロコトレ)を行うようにしましょう。

 痛みなどがない高齢者やロコモ予備軍の方は、関節を傷めないように2つのロコトレから始めてください。1つはバランス能力を付ける片足立ち。床に足がつかない程度に上げた状態で左右1分ずつ、1日3回が目安です。2つ目はスクワット。深呼吸するペースで5~6回、1日3回程度。肥満は関節に負担をかけますので、生活習慣も見直しながらロコトレを毎日続けることが大事です。

 

 

 

女性ホルモン減が骨粗しょう症リスク

 ロコモの原因の一つに骨粗しょう症があります。骨密度が低下して骨がスカスカになり、わずかな衝撃でも骨折しやすくなる怖い病気です。痛みなど自覚症状がないまま進行し、圧迫骨折や大腿(たい)骨頸(けい)部などを骨折して初めて気づく人が多いようです。骨密度が一度低下してしまうと、元の状態に戻すまで非常に時間が掛かります。特に女性は骨を丈夫にする女性ホルモンが閉経により減少するため、骨がもろくなり骨粗しょう症を発症しやすい傾向にあります。40歳を過ぎたタイミングで、骨密度の検査をお勧めします。
 骨密度の検査は手首やかかとを調べるものがありますが、当院では腰と太ももの付け根の骨密度を測るDXA(デキサ)法の検査で正確に計測します。若い健康な骨に比べて70%以下は骨粗しょう症と診断し、70~80%の間でも骨折経験があるなどほかの要因がある場合は治療を開始します。80%以上でも同じ年代と比べて骨密度が低い場合は、運動や食事を指導します。

負荷をかける運動やカルシウム摂取を

 骨を強くするための運動は、体重の負荷がかかるものでなければ骨を作る細胞が活発化しません。階段の上り下りや散歩、つま先立ちからの踵(かかと)の上げ下げなど骨に刺激を与える運動が有効です。食事ではカルシウム、ビタミンD、ビタミンKを含む食材を取るように心掛けて。カルシウムの吸収を促すビタミンDは太陽の光を浴びないと体内で作ることができませんから、適度に日差しを浴びてください。
 骨密度の低下が著しい場合は、薬物治療をお勧めします。血液検査の結果を受け、骨を作る材料を補う、骨の破壊を抑える、骨を作ることを促す―などの効果が期待できる飲み薬を処方。必要に応じて注射の治療を開始、中には半年に1回の治療で済む皮下注射などの治療方法もあります。
 最近は、ダイエットによる栄養不足や過度の紫外線対策によりビタミンDを作れない若い女性が、骨粗しょう症を発症するケースが増えています。顔の骨が痩せると皮膚のたるみにもつながります。定期的に検査を行って自分の状態を知り、適度な運動、バランスのよい食事、治療を続けて健康寿命を延ばしましょう。

ひらまつ病院 整形外科医

 

田中 里紀
(たなか りき)2003(平成15)年、佐賀大学医学部卒業、同整形外科学教室入局。2019(平成31)年4月から現職。日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医、日本整形外科学会認定リウマチ医など。

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